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【質問】イギリスでの隔離基準で, 「低リスク (一般病棟) 対応の中で個室隔離が不要と判断される場合」とは具体的にどのような場合をいうのでしょうか?
また咳嗽がほとんどない患者を総室扱いしてもいいのでしょうか? 現在の日本のMRSA隔離基準の動向についてもお教えください。
【回答】
1. イギリスにおける隔離基準において, 低リスクの病棟とは精神科, 一般内科,
眼科などを意味します。ただし, この高・中・低リスク病棟の判断は, 施設ごとに異なりますので注意が必要です。自施設においてリスク病棟を区分する場合は,
半年から1年間の各診療科または病棟毎のMRSA保菌率, 感染率および死亡率のデータを整理し,
防疫対策委員会などで審議し, 決定します。施設内にMRSA対応経験の豊富な医師がいる施設では,
低リスク病棟に耳鼻科, 泌尿器科, 皮膚科, 老人科, 小児外科などが加えられている施設もあります。逆に,
無関心な医師が多い場合には, 高リスクであるべき診療科が低リスクに設定されている施設もあります。この基準も定期的な疫学統計データに基づいた見直しが必要です。また個室隔離が不要と判断される場合とは,
(1) MRSA保菌部位からの飛散の恐れがない, (2) MRSA保菌部位が完全に被覆可能で,
処置時にも飛散の恐れがない, (3) 同室内の患者にMRSA感染リスクの高い易感染性宿主がいないような場合です。
2. 咳嗽のほとんどない患者の総室扱いは可能か?
患者の取り扱い基準が上記の条件を満たし, しかもスタッフがユニバーサル・プレコーション(Universal
Precaution; UP) を徹底するのであれば可能です。実際に低リスクに該当するMRSA保菌患者同士を総室に収容している病院もあります。このような総室対応を実施した後,
定期的(1, 3, 6, 12ヶ月)にMRSAの伝搬頻度, 感染症発生頻度などを整理し,
問題が生じなかったら貴施設のUPの対応で十分と判断できます。
3. 現在の日本のMRSA隔離基準の動向について
MRSA患者の隔離基準については, イギリスのマニュアルにも記述されていますように「施設によって異なっている」のが現状です。日本も同様で医療スタッフのMRSA感染症に対する習熟程度によって大きく異なります。最近の動向としては,
スタッフのMRSAに対する知識や経験が豊富になるにつれて隔離基準が緩和されていく傾向にあります。
(大阪大学・浅利 誠志)
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