01/08/28
■MRSA院内感染と病院の責任
【質問】
 MRSAについて, ほとんど無知なので教えて頂きたいので, お手数ですが教えてください。 身内がMRSAに院内感染をしたと告げられました。その病院には, 度重なる誤診で全然信用がなかった時期に今回の院内感染ということで, 病院側に落ち度がなかったのか, 明日病院に経過を聞きに行きます。その前にMRSAについての知識を持っていたいのです。あまりに急で本などで勉強出来なかったのでメールさせていただきました。少し勉強しただけですが, 感染は病院の責任だというのも読んだのですが・・・
患者は最近手術をしたばかりで, 術後の体調は悪いです。 本当に申し訳ないのですが, 素人でも分かりやすいように教えていただけないでしょうか。 本当によろしくお願いします。

【回答】
 MRSAは“メチシリン耐性黄色ブドウ球菌”の略称で, 当初はメチシリンという薬剤が効かない黄色ブドウ球菌を示していましたが, 現在ではメチシリン以外の多くの薬剤 (抗菌剤) も効かないことがわかってきました。日本では1980年代になってから出現した菌です。治療薬としてはバンコマイシンが多く用いられています。
 MRSAは代表的な院内感染の原因菌です。MRSAに感染した患者さん, 医療従事者, 外来者, 病院の環境がその感染源として知られ, 多くはMRSAで汚染された手指, 吸気, 呼気によって拡がっていきます。MRSA感染を起こしやすい条件としては, 1) 長期の入院, 2) MRSA感染者やMRSA保菌者との接触が多い場合, 3) 長期間にわたって抗菌剤療法を行っている患者さん, 4) 糖尿病や悪性腫瘍の患者さん, 5) 免疫力が充分でない患者さんなどです。ほとんどの病院では, MRSAによる院内感染を防ぐ目的で, 患者の状態を注意深く観察し, 専門の委員会を設置して予防対策を考え, MRSAが病院で拡がらないように医療従事者にも注意を向けています。しかしながら, 病院のなかには数多くの患者さん, そのなかには感染症の治療を目的に入院している患者さんもいますので, なかなか院内感染を0 (ゼロ) にするのは今でも容易なことではありません。

 (愛媛大学・村瀬光春)

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