01/10/03
■ MRSA に関する公開された情報の入手
【質問】
MRSAについての質問をさせて頂きます。質問に対し, 先生方が誠実に応えていらっしゃるのに感動し, 失礼ながら質問メールを送らせて頂きました。私は現在, MRSAに関する論文「感染症対策の在り方−安全か, 人権か−」に向け資料集めをしている学生です。ここ何週間ずっとネットや文献を探しているのですが, MRSAに関する具体的なデータ・研究 (死亡率, 感染者数, 保菌率, 再保菌率, 感染者の動向など) が見当たらず困っています。死亡率, 感染者数, 保菌率, 再保菌率, 感染者の動向などは, 環境感染学会 (1991) のデータを「院内感染ふたたび」(富家恵海子, 1992, 河出書房新社) から得られたものしかありません。厚生労働省か各種感染学会・疫学研究所などを見ても分かりませんでした。(なお, 環境感染学会のホームページも目を通しましたが, 学会開催の案内のみで研究発表の内容はありませんでした。) どのようにすれば, このようなデータを入手する事ができるのでしょうか?もしよろしければ, そのデータ自体をホームページ上に掲載していただければ幸いです。(私だけでなく, 同じようにデータを求められている方もいらっしゃると思いますし・・・) 勝手なお願いは重々承知いたしておりますが, どうぞよろしくお願いいたします。

【回答】
 “質問箱”に寄せられました質問は, 回答するのが大変難しく, 複数の専門家に回答を依頼しましたが, 以下のような返事でした ... とりあえず, これらの返事を返信致します ... 山根誠久 (琉球大学) 
[回答者 (その1)]
御質問の件ですが, 回答するには非常に難しく, とくに患者数や死亡者数なども正確なデータはほとんどないのではないかと思います。国レベルでのデータなのか, 病院ごとなのかわかりませんが, 私には回答すべきアイデァがありません。申し訳ありませんがお答えしかねます。 
[回答者 (その2)]
 MRSAの死亡率,, 感染者数, 保菌率, 再保菌率, 感染者の動向について公表されている詳細なデータを入手す るのは無理だと思います。しかしながら, 外科系や小児科だけのデータなら化学療法学会誌や感染症学会誌 にも掲載されていますので一部分の入手は可能です。また公的な機関としては, 厚生労働省及び医務局が要望されているデータを全国規模で持っています。この7〜8年間, 全国の主要な施設にアンケートを送り, まとめたものです。・・学生が入手することは困難と思いますが・・・ 
 なぜ詳細なデータが公表されないかという点につきましては, 下記のような事実があります。ある施設では1986年から上記に関する全てのデータをモニタリングしていますが, 病院長命令により学会報告, 雑誌掲載を止められているからです。特に1986〜1992年頃の死亡率は, とても公表できるものではありません。いづれの施設でも同様で丁度, 富家さんが旦那さんを東大病院で亡くされた時期と重なります。また, MRSAの基本治療薬であるVCM (バンコマイシン) のMRSA適応が取れたのも1992年で, 日本の治療薬に関する常識がいかに遅れていたかを証明しています。NHKの特集で, 名古屋大学のMRSA院内感染が公表されましたが, その後, 数件の訴訟が発生したそうです。いづれの病院もこの「訴訟」を恐れて公表しないのです。 
 日本の感染対策は, 非常に幼稚な状態で, 西欧に比べその意識レベルは20年以上は遅れています。これまで 経験的に行ってきた感染対策を理論に基づいた対策に切り替える時期なのですが, 教育者不足, 病院設備の不備, 医師・看護婦の認識不足, 行政の遅れ・・など沢山の問題があり, 医療現場は混乱しているのが現状です。あなたの論文テーマは非常に重要な事項と思います。感染の実態がなぜ公表されない社会構造なのか にも触れられてはいかがでしょうか? 
 


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