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【質問】
はじめまして。主婦です。私の子供は生後1ヶ月半で細気管支炎で入院しました。入院時検査所見では咽頭,
鼻培養は正常だったのに3日目の夜から発熱し, 5日目で咽頭, 鼻培養は正常で,
血液からぶどう球菌が発見され, さらに4日後MRSAと判明しました。医者ははじめ点滴からしか考えられないと言っていたのに,
あとから感染源はわからない, 子供が家からもってきたのかもしれないとも言われました。入院時,
こどもは4,800 kgだったのでNICUの保育器のなかで治療をうけていました。(サクシゾンというステロイドを4日間,
EM (ds)という抗生剤を5日間)私は院内感染ではないかと思っているのですがどうでしょうか?
さらにうちの子は多発性蜂巣織炎になって形成外科にて切開, 排膿され,
さらに数週間後に左肩関節脱臼で整形外科を受診し, 関節炎の手術により切開,
排膿されています。このため, 左肩“こったんかく”が損傷し, 腕の長さが違ってきてます。手術後レントゲンをとると多発性骨髄炎が発見されました。ここで疑問なのが蜂巣織炎になった時点でレントゲンをとるべきだったのではないかということです。また,
その時点で骨髄炎が発見されていたら状況は変わっていたでしょうか? (MRSAと判明される1日前の白血球は20,700,CRPは36.5ありました。)
よろしくお願いします。
【回答】
お子様の生後直後からの臨床経過や基礎疾患などが不明なため確定的なことは言えませんがご質問に沿ってお答え致します。
はじめまして。主婦です。私の子供は生後1ヶ月半で細気管支炎で入院しました。入院時検査所見では咽頭,
鼻培養は正常だったのに3日目の夜から発熱し, 5日目で咽頭, 鼻培養は正常で,
血液からぶどう球菌が発見され, さらに4日後MRSAと判明しました。
入院時の咽頭と鼻腔培養でMRSAが陰性という結果が得られていますので,
基本的には病院から伝播された菌と考えます。また血液培養からMRSAが検出された原因は,
ルート感染が第一の原因と考えます。通常, 血液培養から菌が検出されるケースの約半数はルート感染です。ただし,
細気管支炎が重症化しても肺から血液中に菌が入りますが, お子様のケースでは,
入院時の保菌検索で上気道にMRSAを保菌していないことが証明されているのですから,
原因は点滴ルートからの感染を第一に考えます。・・感染初期ならルートを抜くだけで解熱します。
医者ははじめ点滴からしか考えられないと言っていたのに,
あとから感染源はわからない, 子供が家からもってきたのかもしれないとも言われました。
主治医の当初の見解が当たっています。院内感染の訴訟を恐れて,
後で「感染源は不明」・・と言ったと思います。ただし, 「MRSAを家から持ってきた」というのはまったくナンセンスです。なぜなら,
患者自身がMRSAを保菌しているか否かを入院時に検索し, 上気道にMRSAを保菌していないことが証明されているからです。
入院時, こどもは4,800 kgだったのでNICUの保育器のなかで治療をうけていました。(サクシゾンというステロイドを4日間,
EM (ds)という抗生剤を5日間)
細気管支炎の炎症を抑制するためにステロイドを, さらに二次感染予防のためにEM
(エリスロマイシン) という抗菌剤を投与していますが, この処置については問題はありません。ただ詳細に述べますと,
ブドウ球菌が血液培養から検出された時点, またはMRSAと判定結果が得られた時点では抗菌剤を迅速に適正な薬剤に変更する必要があります。また現在,
多くの病院のNICUではMRSAが蔓延傾向にあり, MRSAが伝播された原因としては保育器,
リネン類, 聴診器およびスタッフの手指などが考えられます。・・・入院された病院のNICUでのMRSA発生率は高いのでしょうか?
私は院内感染ではないかと思っているのですがどうでしょうか?
ご質問に書かれている通りでしたら, このケースは「院内感染」と考えられます。ただ気になるのは,
ご出産時に何かトラブルはなかったのでしょうか? 例えば出産直後にMRSAを保菌したとか,
お子様に基礎疾患があるとか・・?
さらにうちの子は多発性蜂巣織炎になって形成外科にて切開,
排膿され, さらに数週間後に左肩関節脱臼で整形外科を受診し, 関節炎の手術により切開,
排膿されています。このため, 左肩“こったんかく”が損傷し, 腕の長さが違ってきてます。手術後レントゲンをとると多発性骨髄炎が発見されました。
多発性蜂巣織炎の部位, 原因菌については明記しておられませんが, 経過からしてMRSAと考えてお答えします。情報量が少ないため,
正確にはお答えできませんが, 血液培養からMRSAが検出された後に, 続発して多発性蜂巣織炎を起こしたのでしたら“治療ミス”が考えられます。さらに,
蜂巣織炎が完治していない状態で関節炎, 骨髄炎へと拡がっていったと考えられます。通常は,
多発性蜂巣織炎と診断するのに幾度かレントゲン撮影を行い, さらに治療効果判定を行うにも再度レントゲン撮影を行いますので,
結果的に治癒判断 (完治しているか否か) に誤りがあったと考えられます。
ここで疑問なのが蜂巣織炎になった時点でレントゲンをとるべきだったのではないかということです。また,
その時点で骨髄炎が発見されていたら状況はかわっていたでしょうか?(MRSAと判明される1日前の白血球は20,700,CRPは36.5ありました。)
よろしくお願いします。
小さな病巣の場合は, レントゲン撮影を行わない場合もあります。しかし,
多発性蜂巣織炎の場合は, 一般的にレントゲン撮影を行い病巣部を特定します。この時点でレントゲン撮影を行っても初期の骨髄炎は診断が出来ないことが多いです。しかしながら,
最も重要な問題は, MRSAカテーテル感染 (?)→多発性蜂巣織炎→関節炎→骨髄炎へと感染が拡大していることで,
これは明らかな“治療ミス”と考えます。
コメント: 医師を擁護するわけではありませんが, 形成外科医にとってMRSAの治療は非常に難しく,
専門家のアドバイスが必要です。 |