■ MRSA感染後の訪問入浴の対応について | |
【質問】
80歳寝たきりの女性 (胃ろうチューブ, 尿カテーテル挿入中) が, 肺炎で入院しました。その時, 痰からMRSA2+,緑膿菌が検出されたとのことですが, 抗生剤投与後, 解熱し, CRP定量値も11から1.1へ下がり,夫の希望もあり, 10日間の入院の後に退院されました。主治医へ在宅での対応についてお尋ねしたところ, 「CRPも下がり, 感染力はないのだから, 特別の対応は全く必要ない。」とのコメントでした。しかし, 訪問入浴事業所は菌が (−) ということではないので, 感染症扱いとして, 順番を最後にするとの方針を言われました。これに対し, 夫は「先生がいいって言っているのになぜ?」と激怒しています。事業所の方針もわかります。やはり, 感染対策が必要なのか, またCRPと菌量, 感染力の関係について教えてください。 【回答】
夫が激怒しているとありますが, 夫の年齢は何歳ですか。80歳女性の夫であることを考慮すると, かなりの高齢者と思います。高齢となると, 高齢者に特有な頑固な思い込みが先行し, 主治医の説明が絶対的になっていますので, 主治医以外の方々の意見はなかなか理解してもらえない状況と考えます。やはりここでは, 主治医に現在の状況を説明し, 主治医から夫に理解を求めるのが良いようです。この女性は寝たきりで胃ろうチュ−ブや尿カテ−テル挿入された状態であることですが, このような状態では, 回復後も極めてMRSAの保菌率が高くなります。保菌の有無を調べるためには, 喀痰や尿などで細菌検査 (MRSA) が必要です。また, 尿カテ−テルは感染の原因にもなります。 CRPは炎症の有無を調べる検査です。MRSA以外の菌の感染でも上昇します。肺炎患者の喀痰でCRP高い値を示し, MRSAの菌量が多ければMRSA肺炎が強く考えられます。しかし, 一般的にはCRPの値と菌量はなかなか一致しません。感染は宿主の抵抗力と菌との相互の関係で決まってきますので, 易感染者では弱毒菌によっても感染します。しかし, 日常生活が可能な健康な人にはMRSAは感染することは, 通常ではありません。MRSAが感染するのはほとんどが, 生体の免疫力の低下した入院患者です。訪問入浴事業所の対応も, 保菌状態を考慮してのことと考えます。やはり保菌者と非保菌者での入浴時での区別は, 保菌者を増やさないためにも必要です。 (近畿大学・古田 格)
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