01/06/04
■ MRSE (MRSA) の保菌者からの感染
【質問】
 院内感染でのMRSEについて教えて下さい。素人の質問で申し訳ありません。実は私の身内がMRSE保菌者とのことで, 先日NHKより取材をうけていました。一般的に免疫ができている大人なら保菌者からうつることはないとの事ですが, 抵抗が無い乳幼児が一緒にすごして, なにがしか問題をきたす事があるのでしょうか?因みに乳幼児とは私の息子です。つい先日までMRSE保菌者とは知っていなかったのでちょっと気になったのでメール致しました。一緒に過ごしたのは1日程度です。

【回答】
 ご質問にお答えする前にご確認したいのですが, MRSE保菌者(メチシリン耐性白色ブドウ球菌)ではなく, MRSA保菌者(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の間違いではないでしょうか?NHKで先日, 報道していた内容でしたら「MRSA」の飛散に関します特集でしたが?いづれにせよ、両方にお答え致します。
1. MRSEの伝搬と発症について
 身内の方がMRSE保菌者で, その方が乳幼児と接触をされても問題はありません。大人にも勿論, 問題はありません。菌は乳幼児に移る可能性はありますが, MRSEが原因で感染症を発症することはありません。また, 伝搬したとしても通常は, 常在菌(自分が皮膚や口腔内に持っている善玉菌)によって2〜6週間で自然に減少し消失していきます。
(理由)
 このMRSEは, もともと病原性が弱い細菌です。何らかの病気を持って生まれ, 病院に長期入院されている赤ちゃんのほとんどが皮膚表面や口腔内にMRSE を保菌していますが, 発症はしません。私はMRSEが問題となってから約15年間, 入院患者の感染症を調べていますが発症例はありません。ただし, 骨髄移植で白血球がほとんどないような入院患者さんでは極く稀に感染症を起こすことはあります。
2. MRSAの伝搬と発症について
 身内の方がMRSA保菌者で, その方が乳幼児と接触されても問題はありません。大人にも勿論, 問題はありません。また, その身内の方が激しい咳をしていたり手指に皮膚炎等を起こしていない限り, 軽い接触では菌は伝搬しません。また, 伝搬したとしても健康な乳幼児でしたら発症はせずMRSEと同様, 自然にMRSAは消失していきます。
(理由)
このMRSAは, 病原性が強い細菌ですが健康な乳幼児には善玉菌がおり, MRSAの増殖を阻止しますので感染症を起こしません。MRSAが問題となってから約15年間, MRSEと同様に入院患者さんの感染症を調べていますが, 問題となるのは, 白血病で抗がん剤を投与されている患者さん, 抗菌剤が大量に長期間投与された患者さん, 手術および点滴ルートが長期間留置された患者さん等の一部の方が問題になります。

(大阪大学・浅利誠志)

[戻る]