■ MRSA の自然発生・・・(抗生剤による耐性獲得) | |
【質問】
MRSAについて質問いたします。 入院時MRSAスクリーニングが陰性で, 手術などで抗生剤の点滴を使用後, 喀痰でMRSA 陽性となりました。私は“院内感染”が疑わしいと思うのですが, 看護師は医師の抗生剤の使用方法に問題があり, MRSAが“自然発生”したのだと言います。このようなケースが2〜3ヶ月に1度程あります。抗生剤の使い方としては1〜2種類を7〜10日間です。もしもMRSAの自然発生 (抗生剤による耐性獲得) があるのならば, どれほどの頻度で起こるものか教えてください。 【回答】
MRSAにはPBP2'が存在し, すべてのβ-ラクタム薬に耐性を示すことが知られています。PBP2'をコードしている構造遺伝子はmec A遺伝子と呼ばれ, MRSAの染色体上にあります。しかし, mec A遺伝子をもつからといっても, PBP2'が発現しない場合にはβ-ラクタム薬に対して耐性を示さない場合もあります。それはPBP2'の発現に対して抑制的に働くmec I遺伝子, また逆に誘導的に働くmec R1遺伝子があるからです。mec I遺伝子によってPBP2'の発現が抑制されると“感性”となり, 逆にmec R1遺伝子が活性化すると, mec I遺伝子によるPBP2'の発現の抑制を解除できないため“耐性”になります。β-ラクタム薬の投与によってmec R1遺伝子が活性化するものと考えられています。なお, MRSAの自然発生の頻度は残念ながら不明です。 (愛媛大学・宮本 仁志)
【読者からのコメント】
参考にならないかもしれませんが, 当院では, 平成7年3月〜平成14年12月までの期間に喀痰で79名の方が入院中にMRSAが陰性から陽性になりました。これは100日当たり0.009%でした
(100床の病院が常に満床として, 100日あたり0.9人がMRSAが陰性から陽性になるという意味です)。平成14年3月〜平成14年11月まで,
ある施設のご協力でPFGEによるMRSAの分子疫学調査をしていただきましたが, その際,
喀痰についてMRSAが陰性から陽性となった患者さんで明らかに院内感染が否定できた人は3/4
(75%) でした。よって, おおざっぱですが, “MRSAの自然発生の頻度”は当院では100日あたり0.009×3/4
(0.75) =0.006〜0.007%と推定しています。しかし, 当然, 抗生物質の使用頻度などで違ってくると思いますし,
本当に大まかなな計算です。なお, 当院では入院時のMRSAスクリーニングは行っていません。また,
これらの成績は第14回環境感染症学会で発表しました。
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