03/10/20
03/10/22
■ MRSAの検査結果が大きく変動する
【質問】
 いつも丁寧なご回答, たいへん勉強になります。日頃困惑していることをひとつお尋ねいたします。

 私の勤務する内科病棟は, 長期臥床中で喀痰の吸引を要する状況の患者様が多く入院されています。当然, 喀痰の細菌培養を折々で行い, その結果, MRSAが検出される方も少なくありません。その中で気になるのは, 例えば3日間 (3回) 連続や, 1週毎で提出した喀痰の結果で, 1回目 (?), 2回目 (?), 3回目 (3+) とか, あるいはその逆とか, 要するに結果に非常にばらつきがあることです。臨床症状 (痰の量や発熱の有無など) にほとんど変化がない間にも, 検査結果が極端に違うことをどう考えたらいいのでしょうか??? 接触予防策とはいっても, やはり検査結果の(?), (少数), (+), (2+), (3+) といった程度次第で, 病室その他の対応も検討しますので, その都度, 振り回されているような感もあります。検査会社に問い合わせても, なるほどという返事を頂戴できません。不勉強で申し訳ありませんが, ご教示頂ければ幸いです。

【回答】
 MRSAの検査結果が変動するという御指摘ですが, 細菌培養の検査結果の再現性にはいろいろな要因が影響します。なかでも, 検体の種類として喀痰を提出されているようですが, 喀痰は, 血液などと違い, その自身で極めて不均一な検体です。たくさんのMRSAを含んでいる場合には問題はないでしょうが, 少ない菌量しか含まない場合には, ある時には陽性, またある時には陰性に判定されます。細菌検査室で培地に接種, 培養する検体の量は極めて少ないのです (μlの世界です)。喀痰の上の表面を検査するか, 下の表面を検査するかでも結果が違ってきます。また検査を担当する技師によっても変動します。ある技師はMRSAの検出のみを第一に考えますが, また別の技師はMRSA以外の細菌に注意を集中していることもあります。さらに検査方法によっても違ってきます (同じ検査会社であれば同じだとは思いますが)。MRSAを検出し易い培地を用いたか否かでも判定が異なります。従って, 一般的な理解として, 細菌検査の結果で“陽性”は疑いもなく陽性ですが, “陰性”の結果であってもそこに菌がいないとは必ずしも言えないのです。検査会社の方に, MRSAが特に問題だから, MRSAの有無とその量に気をつけて検査するように依頼されるのがまず第一だと考えます。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 MRSAの検査結果の変動をどうみるかについてお尋ねした者です。速やかなご回答, ありがとうございました。検査手法の知識がなく困っていたのですが, お返事を頂戴し, そういうことだったのかと少し理解を進めることができました。感謝申し上げます。引き続き、ページを通し勉強させていただきます。


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