03/11/26
03/11/28
■ MRSAの保菌率について
【質問】
 愛媛県で個人病院を開業している者です。現在入院中のMRSA保菌者の患者様が特殊な感染症だと思いこんでしまい, 精神的に悩まれております。MRSAの保菌者の率は何%くらいあるのでしょうか。母集団は, 年代別でも, 健康者でも, 施設入所者でもかまいませんので, どれくらいポピュラーなものか, それとも稀なものかをご教示頂きたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

【回答】
 Methicillin 耐性Staphylococcus aureus (MRSA)は, 現在では極めてポピュラーな細菌です。院内感染の原因菌として1980年代に出現し, 現在, すべての医療施設が問題を抱えている細菌で, 保菌者も数多く存在します。S. aureusは鼻腔 (特に成人の鼻腔) に定着しやすいため, 保菌調査では鼻腔ぬぐい液が検査されます。琉球大学附属病院職員の鼻腔ぬぐい液からのMRSA分離頻度 (保菌率) は 6.4%, 黄色ブドウ球菌 (MRSAを含む) の保菌率は18.6%でした。また, 

(1) 外来患者から採取された検査材料より分離されたすべてのS. aureusの内, 33%がMRSA

(2) 入院患者から採取された検査材料より分離されたすべてのS. aureusの内, 68%がMRSA

 数年前までは外来患者でのMRSAの比率は約10%前後でしたが, 最近では外来患者でも増加傾向にあります。MRSAが院内感染だけではなく, 市中感染として拡がりつつあることが大きな問題となってきました。

(琉球大学・仲宗根 勇)

【質問者からのお礼】
 大変ご丁寧な解説を賜りまして, 有難うございました。早速患者様への説明に使わせていただきます。きっと, MRSA保菌状態に対する不安が解消すると思います。


[戻る]