■ MRSAに対する“アルコール噴霧の効能” | |
【質問】
特別養護老人ホームに勤務する介護員です。MRSAについての文献を拝見させていただいております。現在私の勤めますホームにもMRSA保菌者がいらっしゃいますが, 個室隔離, ガウンテクニックを用いて対応しております。その方々の介助を行なった後, 職員は全身にアルコール噴霧をして退室しています (もちろん, その後の手洗い・うがいも行ないます)。ところが最近, ある医療従事者から「職員が全身アルコール噴霧をしても何の効力もない。最近のデータではアルコールによる菌の消滅はほとんどありえないこととされている。手洗いの徹底に努めることで充分だ。」とのお話を聞きました。器具消毒などの場合は消毒薬も必要かと思いますし, 文献を拝読させていただいている限りでは, 複数の消毒薬をそれぞれの場面に合わせて使用し, 耐性を作らないことと記載されているようですので, ある程度は理解できたつもりでおりますが, 施設などにおける対応の仕方が一定ではないことから, どの対応にならうべきか悩んでしまいました。ただ現在私どもの使用するアルコール (エタノール) のMRSAに対する効力が, 先の通り無意味なものであれば対応を変える必要があると考えております。お恥ずかしい話, 職員間においては意見が二分するところがありましたので, ぜひ先生方の意見をお聞きしたいと思います。 【回答】
介護者の白衣は毎回消毒できないため, 汚染されることが明らかに予想される場合にはガウンテクニックを第一に考え, できない場合は白衣もリネンと同じ様に消毒を行います。特に胸, 裾, 袖口など, 患者と接する箇所に汚染を受けており, その部分に消毒用エタノールをスプレーするとの報告もありますが, アルコールの吸入による人体への影響や, 消毒効果が使用方法に左右され, 気休め程度にスプレーしたのでは確実な消毒効果が得られないとする報告もあります(注1)。MRSAに対するアルコールの殺菌効果は現在でも有効です。感染者ではなく保菌者の場合, 感染を引き起こすための十分な排菌量がないため, 通常の介護においては, 流水による手洗いや速乾性手指消毒薬での対応で十分だと考えます。しかしながら, 保菌者といえども, 血液, 体液, 分泌物, 排泄物に接触する場合は手袋を着用し, 処置後に手袋を取った後, 手洗いを行うことは当然です。 (注1) 岸本敦子, 他: 看護学雑誌57(9), 839, 1993. (琉球大学・糸嶺 達)
【質問者からのお礼】
|