■ “Mycobacterium fortuitum” について教えてください | |
【質問】
病院で細菌検査を担当している臨床検査技師です。 先日, 手術後の創部からMycobacterium fortuitumが検出されました。この患者さんは心臓外科での手術後, 一度退院されていて, その後創部が化膿してきたので外来で診てもらい, 再入院となりました(御本人は元気でピンピンしているそうです)。膿からは“黄色いぼそぼそした塊”も出てきたそうです。担当医師から聞いた話ですと, なかなか創部が塞がらず, 肉芽の出来方も普通ではないそうです。膿が黄色かったので, ブドウ球菌が検出されていないか, 何度も問い合わせがありました。しかしブドウ菌は検出されず, その他皮膚の常在菌もほとんど検出されませんでした。検査の方も最初は良く分からず, ノカルジアなども疑ったりして, 結局, 同定に至るまで時間がかかってしまいました。通常あまり検出されない菌種だったので, いろいろ文献などを調べましたが, 詳しく載っているものはありませんでした。一応, 文献にLVFXが効くと書いてあったものがあったので, その旨担当医師に伝え, 投与後は創がみるみるうちに塞がったそうです。 今回検出された“Mycobacterium fortuitum”についてもっと知りたいと思いました。詳しい情報がありましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願い致します。 【回答】
臨床材料より分離される抗酸菌は, 結核菌と非結核性抗酸菌とに分けられます。非結核性抗酸菌はI〜III群の遅発育菌IV群の迅速発育菌とに分別され, M. fortuitumIV群 (迅速発育菌) に属し, 他にM. chelonae, M. abscessusがあり, 土壌, 水など, 自然環境に常在的に存在しています。日和見感染症の性格を持っています。人には肺, 皮下膿瘍などの感染症を起こします。 呼吸器感染症では, 一次型感染は稀で, 主に二次型感染で結核の既往歴があり, 肺に空洞を形成している患者および慢性気道病変に由来するものが多いとされています。治療には, 抗結核薬は耐性なので使用されません。主にOFLX, CPFX, AMK, IPM, DOXYなどの抗菌薬が有効です。 肺外感染症で重要な病態が皮下膿瘍で, 外傷歴をもつ女性に多く, 病変は外傷部に一致しています。また縦隔洞炎, 腹膜炎などの感染症も起こします。病変組織よりも膿汁の方が塗抹, 培養の成績が良いようです。 創部からの検出は, 日和見感染が疑えると思われますIV群は血液寒天培地, BTB寒天培地等にも発育可能で, 24時間培養では真菌 (糸状菌) を思わせるようなコロニーですが, 2日目くらいから乾燥したR型で“煎餅 (せんべい)”のようなコロニーに変わります。 グラム染色では陽性の桿菌に染まりますが, 膿汁などでは塊となって見られるので, ノカルジアのように見えます。抗酸菌染色の3%塩酸を0.5%硫酸に変えることで識別できます。参考にすべき教科書は少なく, ・国立療養所非定型抗酸菌共同研究班: 日本における非定型抗酸菌症の研究結核 63:
493, 1988.
(国立都城病院・斉藤 宏)
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