■ 腸内細菌の同定結果が納得できない | |
【質問】
いつも丁寧にお答えいただき感謝しています。 培養結果の解釈で困っていますので教えていただければ幸いです。当院の血液培養でE. agglomeransと同定された患者さんが, 転院先の血液培養ではK. pneumoniaeが培養されました。当院はMicroscanのWalkawayで同定していますが, 一回目はブドウ糖(+), ラムノース(+), アラビノース(+), イノシトール(+), ONPG(+)で, 他はVP, オルニチンを含め, 陰性でS. sonneiが疑われるとのことでしたので, 血液寒天培地から菌をBTB寒天培地に再接種して培養しなおしてみましたら, 今度は, VP(−から+), イノシトール(+から−)となり, さらにもう一回BTB寒天培地に接種して培養してみましたところ, 今度はラフィノース(−から+), イノシトール(−), VP(+)でしたのでE. agglomeransと同定しました。 質問は: (1) VP反応が最初陰性だったのですが, 一回目の菌はVP(−)であり, 血液寒天培地にはVP(−)菌とVP(+)菌が混在していたと考えられますか??? それともVP反応は時に陽性に出る時とでない時がありやすい反応なのでしょうか??? (2) 転院先ではK. pneumoniaeが検出されていますが, K. pneumoniaeだったらイノシトールやアドニット, マロン酸, リジン陽性のはずが, イノシトール以外では常に陰性 (イノシトールは一回目は陽性) だったので, 同定ミスではないと考えてもいいでしょうか??? 【回答】
(1)の質問ですが, 混在の可能性は少ないと思われます。接種菌株の培養に, 最初は血液寒天培地ですが, 2回, 3回目はBTB寒天培地を使用されています。BTB寒天培地には乳糖が含まれていますので反応に影響した可能性があります。血液寒天培地で培養された株を用いて再試験されてはいかがでしょうか。E. agglomeransのWalkawayでの陽性確率はVPが50%, イノシトールが25%であり, 接種時の影響で陽性または陰性になる可能性も大きいと考えられます。 次に(2)の質問ですが, 変動した性状項目はE. agglomeransの同定においては大きな影響はないと思われますので, E. agglomeransと同定されても問題はないと考えます。再確認のために, 運動性の試験をされてはいかがでしょうか。運動性が陽性であればK. pneumoniaeは否定できます。 (愛媛大学・宮本 仁志)
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