04/04/16
■ 粘性のある菌の「劉の反応」について
【質問】
 乳業会社に勤めるものです。微生物検査の実務・指導などに携わっています。

 グラム染色性を確認する方法である「劉の反応」について, こちらの質問箱に何点か質問がありましたが, もう一点質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 水酸化カリウム法においては, 菌自体に粘性がある場合でも問題なく判定できるものなのでしょうか。粘性を持つグラム陽性菌 (芽胞菌) を用いて水酸化カリウム法を実施した際に粘性が消えず, 判定に窮した経験があります。方法としては, 1滴の3%水酸化カリウムに1白金耳を混ぜているだけなのですが, なにか方法が悪いのでしょうか。水と混ぜて粘性を消すという方法も考えたのですが, この方法だとグラム陰性菌 (粘性のあるもの) であっても粘性が出ず, また困ってしまいました (菌濃度が薄いようです)。「劉の反応」は, このような粘性のある菌には適応できない方法ということであれば, それはそれで納得できるのですが。

 ご教示いただきたく, よろしくお願い申し上げます。

【回答】
 これまでの質問箱でも紹介しましたが, 劉の反応の1方法「水酸化カリウム法」は, スライドグラス上で3% KOH水溶液の1滴と白金線で釣菌した微量の菌苔を混和し判定する方法です。ご質問は粘性菌の場合, この粘性が消えないとのことですが, まず1白金耳ではなく, 白金線または爪楊枝の先端で採った菌苔を用いてください。ムコイド株の多くは粘性が残りますが, 劉の反応陽性 (グラム陰性菌) 株は白金線を引き上げると糸を引いたようになりますので, これで判断できると思います。菌株によっては, それでも判断できない場合がありますので, その場合は石炭酸水法や濃硫酸法で試してください。ただし, あくまでもグラム染色鏡検が優先であり, 劉の反応は補助試験と考えるべきではないでしょうか。私はこの反応をたまに利用していることから, この質問箱で紹介しただけであり, 劉先生の実験について追試した経験もありません。ご質問者の方がご興味をもっていただいているようですので, 多くの菌種, 菌株を用いた実験をおやりになって, 論文なりでご発表されることを期待致します。

(大手前病院・山中 喜代治)


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