■ ニューキノロン剤の予防投与による耐性菌 | |
【質問】
私は精神科医ですが, 老人性痴呆疾患病棟に入院中の方2名 (99歳の女性と糖尿病を持つ70才台の男性―いずれも過去に尿路感染を繰り返している) に対してニューキノロン製剤クラビットを, [200 mg/日を週3日投与―4日休薬]というパターンで繰り返し投与しています。これは予防的投薬として行っておりましたが, 薬剤部から薬剤耐性菌の発生のおそれがあるのではないかと警告を受けました。一般的には理解できますが, 現実的にクラビットなどのニューキノロン製剤によるそうした事例はあるのでしょうか。またあった場合, どのような投与法だったのか, そしてどのような耐性菌が発生したのかについて御教示頂きたく存じます。どうぞ宜しくお願い致します。 【回答】 ニューキノロンはグラム陰性菌から, グラム陽性菌の感染症をカバーできるため, その使用量は増加しています。当然のことながら, ニューキノロンについても, この薬剤の使用と共に耐性株が見られるようになり, 腸球菌(E. faecium), 緑膿菌やセラチアなどでは10%〜60%程度の耐性率であり, 年次的には, 耐性化傾向にあります。キノロン剤ではDNA合成に関与するDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVなどの酵素に変異が生ずると耐性化されますが, ひとつの酵素の変異で中等度, 両酵素の変異で高度耐性を獲得するといわれています。高度耐性株は多くはありません。いずれにしても, 継続する抗菌剤 (クラビット) の予防的投与は耐性菌を生みだし, 抗菌剤の乱用ともなりますので, これら症例への予防的投与は中止するべきと考えます。 (近畿大学・古田 格)
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