02/08/09
■ ナイアシン検査と抗酸菌 (結核菌と非結核性抗酸菌)
【質問】
 初めて質問をします。ナイアシン陰性の結核菌や陽性を示した非結核性抗酸菌があると聞きますが, その研究内容やそれに関する資料, 文献などがありましたら教えてください。

【回答 (その1)】
 ナイアシン陽性の非結核性抗酸菌の存在は, 1972年刊行の「結核菌検査指針」ですでに明記されています1)。すべてのMycobacteriaは代謝過程においてナイアシン (ニコチン酸) を産生しますが, M. tuberculosisM. simiaeはナイアシン転換酵素を持たず蓄積します。M. africanum、M. bovis、M. marinumおよびM. chelonaeでもまれにナイアシン陽性になるという報告があります。

 一方, ナイアシンテストの研究は1940年代から始まり, 臭化シアンの毒性問題などから1980年代以降, 検査室ではペーパー法が主流となっています。ナイアシンテストは発育菌量の不足, ペーパーへの吸水障害などの原因による偽陰性が見られます。しかしながら, ナイアシンを産生しない結核菌は極めて稀であるとされており, 検査の実感と細菌学・分類学とのあいだにギャップがあるように思われます2)。ナイアシンテストには, 原法や改良法などもありますので, 詳細は成書を参照してください3)

1) 厚生省監修 衛生検査指針 結核菌検査指針, (5)ナイアシン試験, p. 39〜40, 1972
2) Murray, P.R., et. al, 1999, Identification-Niacin Accumulation test, In Manual of Clinical Microbiology 7th edition 413〜417, ASM, Washington, D.C
3) Isenberg, H.D. editor in chief, 1994, Niacin Accumulation, In Clinical Micro- biology Procedures Handbook 3.12.11, ASM, Washington, D.C

(国立神戸病院 田中美智男)

【回答 (その2)】
 ナイアシン産生試験では, 菌量が十分ならば結核菌の93%以上が陽性を示します。しかし増殖緩慢な菌株や完全密閉培養などの理由で, 発育が悪い場合には陰性を示すことがあります。非結核性抗酸菌ではほとんどすべて陰性であるが, BCG日本株, M. simiae, M. marinum, M. ulceransなどが陽性を示します。現在, このことについてどのような研究が行われているかは不明です。

参考文献
1. 厚生省監修: 結核症, 微生物必携 細菌・真菌検査, p. 359〜410, 日本公衆衛生協会, 東京, 1978.
2. 小酒井望編: 臨床検査全集7, 微生物検査, p. 179〜186, 医学書院, 東京, 1974.

(愛媛大学・村瀬 光春)

[戻る]