02/05/31
■ NICUでの院内感染対策
【質問】
 突然の訪問, 申し訳ありません。現在, 私は, 全病床数350床ほどの総合病院で看護婦として勤めて7年目になります。私の部署は小児科, 産婦人科の混合病棟であり, その中のNICU・新生児室チームで働いています。今回, チーム内でNICUにおいて両親の面会だけではなく, 兄姉の面会を実現したく, 活動中であります。そこで, 質問したく, 訪問いたしました。

 私の病院は北海道の小さな町の中で中心的立場にある病院です。NICUの病床数は9床でありますが, 満床になることはなく, 保育器収容児は月に5例ほどあるかないかであります。低出生体重児においては, 在胎週数30週以降, 出生時体重1,000グラム以上であれば, 私たちの病院で管理しています。また町内外からの搬送児も収容しており, 遠い地域から2時間弱かけて面会にいらっしゃる両親も居ます。現在は, 面会時間は午後1時から8時まで, 両親に関してはその都度調整し, 夜中でも許可したりと, 両親の気持ちに沿って, 赤ちゃんに優しいNICUを目指して看護に当たっています。祖父母, 兄姉は窓越し面会としています。面会時にはガウン着用, 履物の交換, 手洗いを行ってもらっています。日々看護をしていて両親より「早く兄姉に合わせてあげたい」「兄姉はどんな反応をするんだろう」という言葉が聴かれることが多くあります。また, 現代の核家族化において, 兄姉の面倒を見てくれる祖父母が居ないことで, 長時間の距離を面会に来ても, 両親揃っての面会が出来ず, どちらかが片方NICUの中に入り, ほんの一瞬の面会で淋しそうに帰っていく姿を目にすることが多くあり, 私たちはせめて両親揃ってのゆったりとした面会や, 両親の言葉に添えるよう兄姉の面会を考えています。小さな町で, 小さなNICUだからこそ, 実現できると感じてはいるのですが, やはりどんな規模のNICUであっても, 清潔区域というのは変わらないことでしょう。小児科医師は協力的であり, 感染対策など, 前準備をしっかり考えることができればいいだろうといっています。

 前置きが長くなりましたが, そこで質問があります。色々な文献を探してはいるのですが, NICUにおける感染対策について, 面会者からという方面の文献が見つからず, 何か参考となる文献がありましたらお教えいただきたいのですが・・・。また, 兄姉からの感染として考えられるものは何か。健康な小児の培養などを取って, データーをそろえることも考え中ですが, どのようなデーターを取ることが必要なのか (例えば手指の寒天培地とか・・・), そのような報告された文献があるか, 家族面会で両親のほかに面会許可している施設の報告など, 何か参考となることが分かりましたらお教えいただきたいと思っております。
 何か的外れな質問内容ではあると思いますが, よろしくお願いいたします。突然の訪問, また乱文、乱雑ではありますが, お許しください。北海道は身にしみる寒さも春風とともに去っていき, 過ごしやすい季節となりました。これからもご活躍されることをお祈りして, 失礼いたします。

【回答】
 NICUにおける感染防止対策についてですが, おっしゃるとおりあまり多くの文献はないと思います。APICのガイドラインが大変参考になると思います。書物は英文ですが, APIC Text of Infection Control and Epidemiology vol. 1 48: 1〜15 です。そこに訪問者から新生児への感染防止対策の項目があります。最も注意を要する感染症はウイルス感染で, とくに水痘, 麻疹, 風疹に感染あるいは感染したかもしれない小児の入室は制限すべきであると記載されています。また, 感冒様症状やインフルエンザ症状, また“とびひ”など, 皮膚に感染性疾患のある小児も入室は制限すべきと書かれています。一方, このような症状のない小児に対する入室を制限する必要性に関する記載はありません。したがって, 健康な小児の入室は可能と考えてよいでしょう。ただし, その場合, 親は入室する小児の手洗いをしっかり行うようにさせ, 入室後に新生児や保育器を触らないように指導すべきであるとも記載されております。

(京都大学・一山 智)

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