04/06/11
■ 二酸化チタンとカテキンの院内感染予防効果
【質問】
 はじめまして。私は地方の中小病院に勤務する薬剤師です。

 CDCでは環境に対しての感染対策は不要で, 標準予防策を実践することが院内感染を制御する最も重要なことであるといわれているようです。

 最近, “二酸化チタン”による光触媒作用によりさまざまな院内感染をもたらす微生物を処理できるというグッズなどが販売されています。(ドライフラワーなどに二酸化チタンが塗ってあり, 紫外線や可視光線などに反応して殺菌作用や消臭作用を示すということらしいのです)。二酸化チタンのエビデンスがまだ充分でないようですが, 実際の効果のほうはどうなのでしょうか???

 また, お茶に含まれるカテキンを吸入したり, 膀胱洗浄などに利用されMRSAをはじめとするグラム陽性菌の除菌に効果があるという文献がたくさんでておりますが, カテキンのそのほかの緑膿菌やセラチアなどや真菌類に対して効果がでたという文献はまだないようですがどうなのでしょうか???

 以上ご回答よろしくおねがいします。

【回答】
 二酸化チタンの膜表面では, 光があたると活性酸素が発生し, これが有機物を酸化・分解させることから, 病原微生物に対しても殺菌作用を示すことが判ってきました。具体的には大腸菌, MRSA, インフルエンザやSARSウイルスにも有効性が確認され, その特性から, 医療分野では空気浄化装置などに利用されています。私も個人的に, 従来のHEPAフィルターと比較してどの程度感染を予防できるのか, 今後の試験結果が楽しみです (ご指摘のとおりエビデンスはないと思います)。

 お茶カテキンはコレラ菌, 赤痢菌などの腸管感染症原因菌や腸炎ビブリオなどの食中毒菌, MRSAなどに抗菌・殺菌作用を示しますが, 緑膿菌やカンジダには抗菌性を示しません。これはカテキンのもつピロガロール基やガレート基が殺菌に依存しており, 一般にグラム陰性菌 (緑膿菌, セラチア) よりもグラム陽性菌の方を殺菌し易く, 細胞壁のないマイコプラズマに強力に作用することから, カテキンは直接細胞膜を傷害し, 殺菌すると考えられます。

(琉球大学・糸嶺 達)


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