02/09/25
■ 膣細菌フローラと“Nugent score”について
【質問 (その1)】
 はじめまして。JARMAMのホームページを拝見させていただき, 質問のメールをいたします。

 今度, 膣フローラの解析を手伝いすることになったのですが, その時に乳酸桿菌数を調べます。膣フローラの解析の文献を見ていると“Nugent score”というのがよく目にはいるのですが, これはいったいどのようなものでしょうか???その“Nugent score”というのはどのように出しているのでしょうか??? また“Nugent score”をださないと菌数チェックはできないのでしょうか??? おわかりになるようでしたら教えていただけませんか??? 宜しくお願い致します。

【質問 (その2)】
 HPを見て質問させていただきます。私は乳酸菌について腸内フローラについて研究をしてまいりましたが, 今度膣内の乳酸菌について研究をはじめたのですが, 今度乳酸菌を摂取することで膣内フローラがどのように変化するかを調べたいのですが, 膣内フローラの解析方法がわかりません。文献では“Nugent score”をもとめておりましが, その“Nugent score”が何なのか, またどのように求めるのか, それが一般的な方法で, 他には解析方法がないのかなど, ご存知でしたらお教えねがいたいのですが。無知なもので何とぞよろしくお願い申し上げます。

【質問 (その3)】
 質問箱をいつも拝見しています。分からないことがあってもなかなか一人では解決出来なく, 質問箱に書き込みました。

 妊婦膣分泌物塗沫標本のスコアー算出で, BVスコアーを出すのにLactobacillus, Gardnerella, Mobilluncus を顕微鏡で観察し, “Nugent”の方法で算出すると, 細菌性膣炎の診断に有用であると報告されていると思うんですが,顕微鏡での特徴だけでそれぞれの菌がわかるのでしょうか??? Lactobacillus はグラム陽性の大桿菌, Gardnerellaはグラム陰性の小桿菌, Mobilluncusはグラム陽性の三月型の桿菌くらいしか知識がありません。特にGardnerellaは自信がありません。他にこれらの菌を判定できるポイントやこの形態であったらこの菌種とか, 決定つけられる特徴がありましたら御教え下さい。宜しくお願い致します。

【回答】
 “Nugent score”について説明します。女性の腟炎には, カンジダ膣炎, トリコモナス膣炎, 非特異性膣炎があります。非特異性膣炎とは, 牛乳をこぼしたようなおりもの, いやにおいが特徴の病気で, 今日では細菌性膣症とよばれるようになりました。膣のpHがアルカリ側に傾いています。そして, 分泌物の顕微鏡検査でクル−セル (clue cell) がみられます。clue cellとは, はがれた膣の上皮細胞に無数の細菌が付着しているものです。このような状態では, 健常な状態ではほとんど検出されないある種の嫌気性菌群, Gardnerella vaginalis,マイコプラスマなどが異常に増殖しています。そして, そのような人では, 腟内の清浄度を維持するのに重要な役割を演じているLactobacillusが, 著しく減少あるいはほとんど見られなくなってしまいます。かつては, 膣分泌物から嫌気性菌群, Gardnerella vaginalisなどの細菌を培養して診断の手助けにしていたのですが, この検査は大変煩雑で, 時間がかかることから, 膣ぬぐい液の塗沫標本を有効に利用しようということになったわけです。検査室で培養をせずに細菌性膣症 (Bacterial vaginosis, BV)を診断するための方法として, Nugentという人が統一した方法と判定の基準を提案したのです。それがNugentの方法と呼ばれています。その方法によって求められた点数がNugent scoreです。

 簡単に説明しましょう。膣のスメアーを乾燥, 固定, グラム染色し, 1,000倍で観察します。数視野観察します。最初は大変ですが, 慣れてください。大きなグラム陽性桿菌をラクトバシラスモルホタイプと, 小さなグラム不定の桿菌をガードネレラモルホタイプと, そして, わん曲したグラム陰性あるいはグラム不定の桿菌 (短いのと長いのがあります) をモビルンクスモルホタイプとします。(そのようにきめるのです) それぞれについて, 数視野にまったく見られない場合に0, 数視野に1個程度みられる場合に1+, 1視野に1〜4個みられる場合に2+, 1視野に5〜30個みられる場合に3+, それ以上の場合を4+として判定します。ラクトバシラスモルホタイプについては, 4+を0点, 3+を1点, 2+を2点, 1+を3点, 0を4点とします。ガードネレラモルホタイプについては, 4+を4点, 3+を3点, 2+を2点, 1+を1点, 0を0点とします。モビルンクスモルホタイプについては, 4+〜3+を2点, 2+〜1+を1点, 0を0点とします。その合計を求めます。0点から最高10点となります。4点以上の場合に, 細菌性腟症と判定するのです。

 “Nugent score”と実際の培養結果を比較した青森県立中央病院の中村敏彦, 川村千鶴子らの成績が日本臨床微生物学会雑誌に掲載されていますので, 参考にして下さい。scoreと実際に検出される細菌の種類には関係があります。Nugent scoreが0〜3では, 乳酸菌が優位で, ほぼ正常範囲のフローラを反映しています (Normal score)。Nugent scoreが7〜10では乳酸菌がほとんど検出できず, 嫌気性菌が異常に増加しているきわめて異常なフローラです(BV score)。4〜6は, その中間です (Intermediate score)。

 膣の細菌を培養する場合には選択分離培地を使用するかどうかを決めることがまず必要です。また, 対象とする菌種により, 使用する選択培地の数と種類が概ね決まるでしょう。菌数チェックには (半) 定量培養が必要でしょう。

(岐阜大学・渡邉邦友)

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