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【質問】
ヨーグルトのなかに, どのくらいのビフィズス菌が入ってるか調べたいんですけど,
なにをつかって調べればいいでしょうか???
【回答】
まず, 質問者がどんな立場で, どんな知識と経験があるのかわかりませんし,
目的とその意図がわかりません。例えば生活環境研究所などの検査機関における調査を目的とした質問であれば,
かなり専門的な回答をしなければならないし, これが専門職以外の方が簡単に調べたいと言うのであれば,
顕微鏡や培地, 培養, 同定などの専門用語の解説から必要になります。ゆえに,
ここでの回答としてはごく一般的な話として概説してみたいと思います。
1. ヨーグルトについて
乳の蛋白質を乳酸菌の出す酸で凝固させたのがヨーグルトであり, この産物(乳酸や酢酸)
は悪玉菌の増殖を抑え, ビタミン類を作り, 免疫力を活性化する働きがあります。ヨーグルト1
ml中には乳酸菌が一千万匹以上いるよう食品衛生法で定められており, ある調査によればプレーンヨーグルト1
g中に生きた乳酸菌が一億匹いたことが証明されております。ヨーグルト内の乳酸菌は常に酸を出し続け,
製造直後からだんだん酸性が強くなって行きます。ゆえに酸っぱいのが好きな人は長く保管してから食べたら良いし,
酸っぱいのが苦手なひとは製造直後の商品を食したら良いことになります。ちなみにこれらの品質保持期限は14日間だそうです。
2. 乳酸菌について
乳酸菌には数多くの種類が含まれており, 腸内に生きたまま到達できる代表的菌がビフィズス菌です。この菌の形が枝分かれした小さな棒状にみえたことからbifido
(分岐した), bacillus (小桿菌), つまり学名でBifidobacteriumとなった訳です。この菌属にはたくさんの菌種が含まれており,
B.
adolescentis, B. bifidum, B. breve, B. infantis, B. longumなどがそうです。他の乳酸菌としてはLactobacillus属
(L. acidophilus, L. brevis、L. buchneri、L. bulgaricus、L. casei、L.
fermentum、L. helveticus、L. plantarum、L. salivarius) やStreptococcus属
(S. cremoris、S. lactis、S. thermophilus) があります。
ちなみに市販品のうち, 明治ブルガリアヨーグルトにはL. bulgaricusとS.
thermophilusが, 雪印ナチュレにはB. longumとL. acidophilusが,
そして森永ビヒダスにはB. longumが入っています。
3. ヨーグルト中のビフィズス菌定量検査について
ヨーグルトの一定量 (例えば1μl) をスライドグラスに載せ, 乾燥後に染色し,
顕微鏡 (1,000倍率) ですべての菌の数を算定します。その数に倍数 (この場合は1,000倍?1
ml/1μl?する) を乗じ, 1 ml中の菌数を求めますが、濃厚で菌数を数えることが困難な場合は最初のヨーグルトを水で希釈します。当然希釈倍数を最終数値に乗じることになります。ただし,
このような検査ではヨーグルト中の菌数は求められるものの, その菌がビフィズス菌であるかどうか,
そして生菌か死菌かの判断はできません。
そこでこんどは培養検査 (生きた菌を発育させる) を行ないます。そのためにはビフィズス菌が発育できるためのあらゆる栄養素
(ペプトン, 肉エキス, 植物エキス, 酵母エキス, ビタミン類, 糖類, 血液成分など)
を含めた培地を用います。さらに培養は, この菌の至適条件 (遊離酸素のない状態)
を満たすための特殊設備 (窒素80%, 炭酸ガス10%, 水素10%) の中で発育させます。この場合もヨーグルトの一定量を希釈し,
培地に塗布培養する定量培養法を行い, 1 ml中の生きた細菌数を算定することになります。そして発育した細菌がBifidobacteriumであるかどうか,
さらにBifidobacterium属のなんと言う菌種かを決定するための同定検査を行ないます。その手段としては形態学
(顕微鏡による分析) や化学的性状確認試験 (ガス・クロマトグラフィーによる分析など),
そして分子生物学的検査などがあります。いずれにしても, かなり大掛かりな設備が必要であり,
専門機関でないと不可能と思います。
4. おねがい
簡単に説明しましたが, 詳細な内容につきましては, 専門の検査機関や乳酸菌飲料を取り扱っているメーカーの研究室にお尋ねください。
(大手前病院・山中喜代治)
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