02/12/24
■ “宵越しのお茶”から分離された細菌

【質問】
 私は大学3年です。実験 (授業) で, 菌の分離実験をしました。私は“宵越しのお茶”は飲まないほうがいいと聞いたことがあったので, 放置した茶ガラから菌の分離を試みました。
 茶がらに滅菌水を加えて, その上清をスキムミルクを含む標準寒天倍地に塗布しました。次の日, 枯草菌のようなコロニーができていました。コロニーの周りにハロができていたので, プロテアーゼ産生菌だと思います。他の実験で, 酸素要求生は好気性で, 発酵性は酸化性で, 運動性ありと分かりました。これ以上実験をさせてくれなかったので (お金の関係で), いまいち菌が何かわかりません。先生にコロニーを見てもらうと, ハロが大きいから, 溶血性があるかもといわれました。いろいろ調べていますが, やはり分かりません。ネットでいろいろ検索しているとこのサイトを見つけました。
 変な質問ですが, 茶がらに生育しそうな菌は何かわかりますか??? お茶にはカテキンがあるので最初から菌がいたとは思えません。何か落下菌ということでしょうか???

【回答】
 茶殻にも環境条件が整えば多くの細菌や真菌が繁殖すると考えられます。今回の例ではどのような環境に放置していたかが記載されていませんが, おそらく落下細菌が混入する開放状態で放置していたものと推察いたします。落下細菌としては, Bacillus属, Micrococcus属, Staphylococcus属, Pseudomonas属, Penicillium属などがあります。細菌の同定をする場合は, まずグラム染色性と形態を知ることが重要です。質問には実施したことの記載がありませんので不明です。質問内容から推察しますとBacillus属が最も考えられます。標準寒天倍地に翌日発育し, ハローを認めていること, 好気性, 運動性などからBacillus cereus を推定しますが, B. cereusは発酵性であるため一致しません。詳細な性状は「Bergey's Manual」1986年版に記載されていますので参照されることを推奨いたします。

 宵越しのお茶は, 茶葉に含まれるたんぱく質の変性やタンニンの酸化により本来の味が損なわれるため言われているものと思います。質問の実験からも分かるように, 雑菌の混入が考えられるのも1つの原因でしょう。

(愛媛大学・小野寺 一)

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