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【質問】
以前も2度, 質問させていただきまして, ご回答ありがとうございました。また,
宜しくお願いいたします。
入院時の未治療喀痰 (280名)を用いての小川法とMGIT法の比較検討では,
MGIT法陽性, 小川法陰性は認められましたが, 小川法陽性, MGIT法陰性は認められませんでした。約3年前のMGIT導入時の検討でも同様の結果であり,
小川法にのみの発育菌の経験がまだありません。文献などによりますと, 小川法にのみ発育しやすい抗酸菌もあると書いてありますが,
どのような菌なのかを具体的にお教えください。
【回答】
私達のMiddlebrook 7H9 broth 液体培地を用いるMB/BacTの検討では1,127件の喀痰検体を用いました。卵
(小川) 培地とMB/BacTのいずれか, あるいは両方で陽性となった検体が 453件
(陽性率 40.2%)でしたが, この陽性検体453件の内14件 (3.1%) が卵 (小川) 培地で“陽性”,
MB/BacTで“陰性”に判定されています。これら14件の内訳は, 8件が M. tuberculosis
complex, 残る6件がいわゆる非定型抗酸菌 (nontuberculous mycobacteria; NTM)
でした。さらに卵 (小川) 培地のみで分離されたこれら14件の抗酸菌をMiddlebrook
7H9 broth 液体培地で継代培養しましたが, M. tuberculosis complex の6株はまったく菌発育が観察されず,
継代培養できませんでした。従って, この6株のみが卵培地で発育するものの,
broth 液体培地では発育できない菌株ということになります。これらの6株は,
結核症治療中が3件, 初回診断が3件ですので, 抗結核薬の影響ではなさそうです。いずれの菌株も,
卵 (小川) 培地上での菌発育に特徴があり, 発育した菌コロニーが小さく, 培養を継続しても菌コロニー数が増えてきません。またBrothMIC
MTBでの薬剤感受性試験でも, 試験条件である7〜10日間の培養では菌発育対照のウェルに充分な菌発育が観察できませんでした。結果として,
頻度は3.1%と低いものの, 卵 (小川) 培地のみで発育する結核菌があることは事実のようです。
(琉球大学・山根 誠久)
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