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【質問】
いろいろと見て回ったところ, “お酢”についての内容が書いてあったので,
質問させていただきます。
現在, 訪問看護を行っているのですが, 在宅療養者の中で (私的には尿からのものだと思うのですが)
体交したときに, 排尿があるんです。最後に, 膿汁様の流出物があります。往診のときに相談したところ,
帯下の可能性もあるとの返答。一緒についてる看護婦からは, 膣洗の指示, 様子を見て欲しいと。そのときに,
微温湯に“お酢”を入れてやってみてはどうかといわれました。しかし, 私としては,
効果もわからないので検討中。膣の洗浄で, “お酢”を入れるのは適当なのでしょうか?
粘膜の刺激などはないのでしょうか? ご回答いただけたらと思います。
【回答】
人体に対する“お酢”に関する科学的根拠がないので, お勧めできません。科学的根拠に基ずく介護が望ましいと思いますので,
身体の清拭, 口腔洗浄, 陰部洗浄などに“強酸性電解水”の使用を検討されてはいかがでしょうか。ただし,
薬事認可されているのは今のところ手洗いと内視鏡洗浄のみですので, インフォームド・コンセントが必要ですが,
効果があり, 副作用はほとんどありません (問い合わせ先 045-974-6339)。
“お酢”についての抗微生物効果について, 食品に関しては下記の論文があります。
「食酢の殺菌, 静菌作用」菅野幸一, 防菌防黴 26(4): 187〜197, 1998.
上記論文の引用文献もほとんど食品関係の, 主として食中毒対策への応用に関するものです。前回の回答のように,
“お酢は粘膜を刺激することから奨められない”ということです。しかし, 酸性で抗微生物効果があり,
基礎的データが蓄積された「強酸性電解水」は, 介護に活用されると効果がある思いますのでお勧めします。下記に,
陰部洗浄に関する論文 (いずれも効果があり副作用なし), 「強酸性電解水」の説明をさせて頂きます。
高山裕喜枝, 他「強酸性電解水による陰部洗浄の効果の検討」ICUとCCU 21(6):
579〜582, 1997.
廣瀬雅哉, 他「強酸性水を用いた産じょく期外陰洗浄の有用性」産婦の進歩 48(2):
149〜153, 1996.
強酸性電解水 (アクア酸化水, 強酸性水) とは?
定義: 水道水に微量食塩を添加後, 有隔膜式電解槽内で電解, 陽極側より生成した水
性質: pH 2.2〜2.7, 酸化還元電位は1100 mV以上, 有効塩素量は20〜60mg/L
殺菌要因: 次亜塩素酸が主体
使用目的: 医療機器としての認可は手洗い (内視鏡洗浄消毒機器の認可あり)
特徴: 幅広い殺菌スペクトル, 即効的な作用, 生体に対する安全性が高い
食塩水溶液を電解すると, マイナス側にナトリウムが, プラス側に塩素が移動する。このプラス側に移動した塩素を集めた水が“強酸性電解水”といえる。機種により隔膜・電極の性状が異なり,
オゾン生成量が多い場合もあるが, 多くの機器から生成される“強酸性電解水“の殺菌因子は,
生成された塩素が水溶化することによって生じる次亜塩素酸が主である。
塩素系消毒薬の殺菌効力はpHに依存する。酸性領域で殺菌効力が優れているが,
塩素ガスが発生するため使用できなかったものが, 電解技術によって使用現場で安全に生成可能としたものが“強酸性電解水”である。この“強酸性電解水”の特徴・使用方法は,
現在までに集積されたデータから以下のようになる。
(1) 栄養型細菌, 抗酸菌, ウイルス, 真菌をはじめ芽胞形成菌まで, 広範な抗菌スペクトルをもち,
即効的な作用を呈する。また, 市販消毒薬で認められている耐性菌はできにくいと考えられる。
(2) 電解条件, 使用する水の性状, 食塩の濃度によって生成される“強酸性電解水”の物性値,
殺菌効果が異なる。少ない塩素量で, 特徴である広範な抗微生物効果を呈するには,
pH 2.7〜3.0が最適である。
(3) 使用温度は20℃以上が望ましい。また, 40℃程度の湯煎も効果的な場合がある。
(4) 血液・体液などの有機物, ラジカル消去剤などにより殺菌効果は低下する。流水下で使用するか,
浸漬使用の場合は, 何回か取り替える必要がある。
(5) 市販消毒薬との相互作用の検討成績から, 塩化ベンザルコニウム製剤
(オスバン(R)など), ポビドンヨード製剤 (イソジン(R)など), 塩素系消毒薬 (ミルトン(R)など),
アルコール製剤使用下では問題がない (ただし相乗効果はない) が, グルコン酸クロルヘキシジン製剤
(ヒビテン(R)など), 両性界面活性剤 (テゴー51(R)など), 特に, クレゾール石鹸の使用下では,
顕著な殺菌効果の低下が認められたので注意が必要である。
(6) 生体毒性は市販消毒薬と比較し低い。しかし, 塩素が含まれているのでまったく毒性がないわけではない。また,
密閉した場所で長期間使用する場合は換気などに注意する (特にpH 2.5以下になると放出塩素量が増加する)。
(7) 原則として生成直後に使用する。生成後の殺菌効力は, pHと塩素量を測定することである程度推測できる。簡易塩素量測定キット,
試験紙なども使用できる。
(昭和大学・中村 良子)
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