■ 結核菌PCR検査での喀痰前処理法 
【質問】PCR法で喀痰中の結核菌を検出するとき, どのような喀痰前処理法が勧められているのでしょうか??? できたら MGITやMB/BacTといった液体培地での培養検査にもそのまま使えるような前処理法を採用したいと思っていますが。 
 

【回答】PCR法(アンプリコア)に用いる場合の喀痰前処理法としては米国のCDCが推奨しているNALC-NaOH法をお勧めしております。この方法は検体全量をNALC-NaOHにて消化・雑菌処理した後, 3000g, 15分間遠心集菌した沈渣を検査に用いるため検出感度が優れており, 欧米ではこの方法で処理した検体を塗抹鏡検, 液体培養, PCR等に用いています。アンプリコア, MGITではこのNALC-NaOH法を標準法としております。

 より感度と精度の高い検査のためには喀痰前処理において以下の3点を満たすことが必要となります。(1) 検体の均質化, (2) 雑菌の処理, (3) 遠心による集菌PCRにおいて十分な性能を得るためには特に(1)と(3)を満たすことが重要となります。また, 市販の喀痰処理剤の中にはPCR反応に負の影響を及ぼすものもありますので注意が必要です。
最近, NALC-NaOH法と喀痰溶解剤のスプータザイムを併用する方法が提案されています。この方法は特に(1)と(2)の効率を高めるために有効な方法であると考えられます。液体培地 MB/BacTにおいてはこの方法を標準法として推奨しています。またPCRにおいてもスプータザイム処理を併用することでPCR反応阻害率が低くなる傾向が認められます。

今後, 塗抹・培養・PCRにおける喀痰前処理法の統一, 液体培地・核酸増幅法を含めた迅速検査フローの体系化が望まれます。

NALC-NaOH法
Kent PT,Kubica GP : Pubric Health Mycobacteriology. A Guide for the Level III Laboratory. U.S.Department of Health and Human Services, Public Health Service, Center for Disease Control, Atlanta, U.S.A. 1985, 31-55.

(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社   三宅一義)

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