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【質問】
抗酸菌検査のPCRに関する文献や資料を読みますと, よく感度, そして特異性(度)という言葉がでてくるのですが,
その感度, 特異性(度)とはなにか。公的な基準物質との比較および検討なのでしょうか???
また, できれば具体的にそれらの検討法をお教え下さい。
【回答】
本来, 感度 (sensitivity), 特異度 (specificity) というパラメータは,
ある疾患 (例えば心筋梗塞) を診断する時のある検査 (例えば心電図) のもつ診断能力を示す数値として定義されました。この考え方をそのまま検査方法,
検査試薬の評価に応用するように提案した者として, 本来の目的から多少逸脱して理解されていることに責任を感じています。
基本的な考え方は, 参照法 (reference) を“真の結果”として“仮定”した時,
評価している方法の一致率を算出するものです。従って, 原理的には“参照法はどんな方法でもよい”となります。抗酸菌染色・検鏡法を参照法とした時のPCR法の感度,
特異度も算出されます。検鏡陰性, PCR陽性の頻度が高いと予想されるので, 結果としてPCR法は感度が高く,
特異度が低い (偽陽性が多い) となる筈です。ただ, 評価施設での結核菌とMACの比率にも依存します。何故なら,
MACが多くを占める施設では, 抗酸菌染色・検鏡陽性, “結核菌のPCR”陰性が多発するからです。このことから分かるように,
感度, 特異度は, 選択した参照法によって, また評価した施設の特性によって大きく変動する筈です。従って,
どんな方法でも参照法として選択することができますが, その時代, その施設で利用できる“最良の方法”を参照法に選ぶべきでしょう。ちなみに,
御質問にある抗酸菌検査でのPCR法の評価では, 多くの報告で“最良の培養法”が参照法として選ばれています。
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抗酸菌染色・検鏡
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陽性 |
陰性 |
PCR法 |
陽性
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98(件) |
40(件) |
陰性
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2 |
60 |
この例での, 抗酸菌染色・検鏡法を参照法とした時のPCR法の感度, 特異度は;
感度 = 98/(98+2) = 98%
(参照法-抗酸菌染色・検鏡法で“陽性”と判定された件数の内, 何件が評価している方法-PCR法で“陽性”に判定されたかを示す数値)
特異度 = 60/(40+60) = 60%
(参照法で“陰性”と判定された件数の内, 何件が評価している方法で“陰性”に判定されたかを示す数値)
期待陽性率 (predictive positive value) = 98/(98+40) = 71%
(評価している方法で“陽性”と判定された件数の内, 何件が参照法で“陽性”に判定されたかを示す数値)
期待陰性率 (predictive negative value) = 60/(2+60) = 97%
(評価している方法で“陰性”と判定された件数の内, 何件が参照法で“陰性”に判定されたかを示す数値)
参考文献
Griner P.F., Mayewski R.J., Mushlin A.I. and Greenland P.: Selection
and interpretation of diagnostic tests and procedures. Ann. Intern. Med.,
94: 553〜600, 1981.
(山根 誠久・琉球大学)
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