■ 定量的PCR法とcolony forming unit (CFU) | |
【質問】
初めて質問させていただきます。私はある分析機関で働いており, 生物に関する知識はほとんどございません。初歩的な質問ですが, ご教示頂ければと思います。 レジオネラの分析を行うにあたり, リアルタイム定量的PCRを用いようと思います。この場合, 最終的な結果は, 単位容量あたりのコピー数になると思います。培養法では, 単位容量あたりが形成するCFU数のため, 当然比較することができないと思います。現在, 温泉などで規制されている 10 CFU/100 mlという単位を求めるならば, PCRはまったく使用できないものなのでしょうか??? また仮に, 定性分析にのみPCRを使用するとならば, コロニーを形成する力のない菌 (消毒などで弱りかけ, あるいは死滅したもの) まで増幅されると思うのですが, そのあたりのところはどうなのでしょうか??? ご指導の程, よろしくお願い致します。 【回答】
定量的 PCR 法によるレジオネラ属菌の検出結果と培養法による結果とでは, その方法の違いにより一致を見ないことは既にご理解いただいている通りです。さて, 厚生労働省によるレジオネラ症防止指針における 10 CFU/100 ml という値は, その検査法における検出限界値であり, 規定の方法に従い, 一定量の試料を濃縮して培養した培地上にひとつのコロニ−の形成を認めた場合にその濃縮割合から換算した菌量が先述の値になるわけです。すなわちこの基準というのは「規定の検査法にて検出されないこと」と読み替えても差し支えないと思われます。 質問者は, PCR 法による検出で厚生労働省の通達を満たすかどうか問いたかったのでしょうか??? もしそうだとすれば, 通達では CFU による規定しか示されていませんので, 培養法も同時に検査しなければいけないと言うべきなのかもしれません。それとも, 他の目的でレジオネラ菌属の検出をPCRで実施しようとされたのでしょうか。温泉や24時間風呂のレジオネラ汚染とはまったく異なる領域での検索を試みるというのでしょうか。このあたりが回答者にはよく理解できなかったので, これ以上踏み込んだ回答は困難です。 それでは, PCR によるレジオネラ菌属の検出は意味のないものでしょうか。ご存知のようにレジオネラ菌属の培養には比較的日数を要します。その点においては, PCR 法は迅速性という点において優れた方法と言えるでしょう。また, ある程度の定量性もあり, 結果によっては汚染箇所における処置のレベルを決定するための良い指標にも成り得るのかもしれません。 なお, 最後のご質問の, いわゆる死菌も含めた培養不能菌が検出されることは避けられないことであることは当然のこととしてお考えいただかねばなりません。 最後にもう一度, “PCR 法による検出法で, 厚生労働省の通達を満たす, あるいは通達に準拠する成績を得ることは出来ません”。 質問者の求める回答とズレがあったとしたらお許し下さい。 (信州大学・川上 由行)
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