02/07/30
Propionibacterium acnes を用いた試験方法について
【質問】
 お世話になります。嫌気性細菌 (Propionibacterium acnes)を使用して試験を予定していますが, 下記のような疑問がありますので, よろしくお願いします。
(1) P. acnesを液体培地で増殖させる方法。
(2) 液体培地で増殖したP. acnesの菌数を測定する方法。よく使われている10希釈系列法は使えないでしょうか。
(3) 菌の保存方法。
 以上の3点です。よろしくお願いします。

【回答】
お答えします。
(1) P. acnesを液体培地で増殖させる方法。
 先ず, 適当な試験管かフラスコに本菌の発育支持力のある液体培地 (GAMブイヨンなど) を作って下さい。培養ですが, 嫌気性グローブボックスがあれば, 通常の通性嫌気性菌とまったく同じように行えばよいので, なにも難しいことではありません。嫌気性グローブボックスがない場合でも, あなたの培養したい容器のサイズに合わせて嫌気性ジャーなど, 嫌気性培養容器を準備すれば簡単に実施できます。注意点は, (1) 培地は, 可能な限り嫌気的な状態で使用するということです。通常の手順で培地を作る場合, オートクレーブから出したらすぐ水道水で冷却して使用して下さい。すぐに使用しない場合には, 使用直前に100℃で10分くらい加熱して, 水道水で冷却する操作 (脱気) をして使用して下さい。長期間の大気との接触により, 培地中に嫌気性菌に有害な過酸化物が蓄積してきますので, 大気中での保存は7日くらいにしておいて下さい。嫌気性容器の中で嫌気的に保存しておくと最高です。(2) 本菌は発育がやや悪いので, 十分な菌量を得るには長い培養 (3日以上) が必要となります。これを短縮したい場合には, なるべく試験管の上部まで培地を入れて空気を追い出し, 栓をブチルゴム栓に代えて, 培養中に栓がとれないように固定して, 震盪培養して下さい。このようにすれば, 特別嫌気培養しなくても発育するでしょう。もちろん, 嫌気ブローブボックスで震盪培養 (マグネチックスターラ−を使用してもよい) の装置を入れて培養するのが理想的です。(3) シードには, GAM寒天培地などの寒天培地の集落を使用して, 滅菌水中に濃厚な菌液を作成し, それを液体培地10 mlあたり1 mlほど加えて培養するとよいでしょう。この菌は酸素に耐性の菌ですが, 寒天培地上の集落は30分以上大気中に放置しないように常に心掛けましょう。

(2) 液体培地で増殖したP. acnesの菌数を測定する方法。よく使われている10倍希釈系列法は使えないでしょうか。 
 使用可能です。寒天培地は新鮮なもの, あるいは嫌気性に保存したものを使用して下さい。カウントしやすい集落を形成するまでに3日以上の培養が必要でしょう。

(3) 菌の保存方法。
 15%スキムミルク水溶液を作成し, セラムチューブ (2 ml) など, 適当な凍結可能な容器に1 mlほど分注し, 115℃, 10分間滅菌し, 冷蔵しておいて下さい。寒天培地上のP. acnesの集落を掻きとり, 濃厚菌液をつくり, ―60℃以下で凍結保存するのが最もよい方法でしょう。

(岐阜大学・渡邉邦友)

[戻る]