02/03/29
Propionibacterium acnes からの菌体DNAの抽出方法
【質問】
 今回, 新たな壁にぶつかってしまいました。もしも可能でしたら, 回答を頂けたらと思います。
 Propionibacterium acnes (グラム陽性菌) の「16SリボゾームDNA」領域をPCRしたいと考えております。その際, P. acnes コロニーからのDNA抽出のステップが入りますが, このステップについてです。実験書を頼りに一度 (リゾチーム・フェノールを基本とした抽出法) を行ってみましたが, PCRで目的のバンドを検出することが出来ませんでした。グラム陽性菌からのDNA抽出は難を要すると聞きます (PCR操作自体は他のサンプルを用いた実験で, P. acnesが増幅されることは確認済みです)。時間のあるときでかまいませんので, ご回答を頂けたらと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。

【回答】
 グラム陽性菌ですので, リゾチームの使用には問題がある場合があるでしょう。陽性菌の細胞壁のおだやかな破壊には, リゾチ−ムがうまく働かない場合には, その代わりにアクロモペプチダーゼ (和光) がよく使用されています。ところで御質問の, Propionibacterium DNAのPCR増幅については, 金沢大学医学部保健学科検査学講座の中村雅彦らが, 16S rRNAとlipase遺伝子に対するプライマーを設計, 使用して, 増幅に成功していますので, その方法を参考にして下さい。また東京医科歯科大学病因病理の江石義信らは, サルコイドーシス患者のリンパ節組織切片から, Proteinase K (和光) の処理と, Qiaamp Tissue Kit (Qiagen, Varencia, CA, USA)を使用して, Propionibacterium DNAを回収していますので, その試薬キットの成分を調べて参考にしてはいかがでしょう。プライマーの設計についての情報もあります。
・生物性状試験とPCRによるPropionibacterium acnesの鑑別法の比較検討. 第13回日本臨床微生物学会総会ポスター発表 (東京), 2002. 1
・諸外国サルコイド−シス患者からの生検リンパ節における細菌DNAの検出と定量解析. 平成12年度「厚生科学研究」 特定疾患対策研究事業 「びまん性肺疾患研究報告書」p 45〜52, (平成13年3月)

(岐阜大学・渡邉邦友)

[戻る]