04/04/13
■ パルスフィールド電気泳動での疫学調査
【質問】
 ○×病院検査科のものです。

 パルスフィールド(PFGE)に関する質問です。今回, 感染対策委員会において, MRSAをPFGEにて感染源の疫学調査を実施することとなりました。非常に高額な検査でありますので, 実りのある検査としたいと考えます。通常, アウトブレイクが起こった場合に実施すべきものと考えますが・・・質問は・・・

(1) 日常分離される株をすべて実施する (アウトブレイク以外の株) ことは有意ではないとされる根拠。

(2) ここまで蔓延し, 多数の株が常在菌化している (と考えます) MRSA感染症は, この中の1つの株のみにより炎症を起こしているのか??? (多数の株が同時に感染を起こすと考えた場合, PFGEの結果の信頼性は???)

(3) スバリ, 有意なPFGE検査を実施する条件とは???

 お忙しいとは存じますが, 御教授のほど宜しくお願い致します。

【回答】
 細菌の疫学的解析法には, 大きく分類して2種類が用いられています。生化学的性状やファージ型別, コアグラーゼ型別, 抗菌薬感受性パターンなどの表現型別法とPFGE法やプラスミドプロファイル解析法, PCR法などを用いて遺伝子構造を解析する遺伝子型別法があります。

 質問の(1) に対する回答としては, 日常検査から得られる表現型別法で大まかな分類が可能であることです。高価で複雑な操作を必要とするPRGE法をすべての菌株に用いるかどうかは, MRSAの分布状態を把握するためなのか, 将来の発生に備えてデーターベースを作製する目的かなどによって異なるものと考えます。

(2) PFGE法は疫学的解析法としては信頼性の高いものの一つです。感染症を起こす菌は1種類の場合もあれば, 2種以上の混合した例もありますので, それぞれについて検査をすることはそれなりに有効と考えます。

(3) アウトブレイクの有無を判定したり, 感染ルートや感染源を特定することの目的に使用します。

[参考文献]

満田年宏: 分子疫学の初歩と病院感染対策. 分子疫学ってナンダ!. INFECTION CONTROL 10: 390〜398, 2001

(愛媛大学・村瀬 光春)

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