03/03/25
■ “Rhodotorula”らしき酵母真菌について
【質問】
 環境微生物検査を担当しております。先日, とある製薬工場の床面より酵母様真菌を分離いたしました。当検査室では酵母様真菌が分離された場合, すべて「Candida-sp.」として結果を報告しているのですが, 今回「種まで同定して欲しい」との依頼を受けました。こちらでは同定が出来ないので, 他の検査会社へ同定の依頼を致しました。3週間ほど経って, “フサリウム”との同定結果を頂いたのですが, 明らかにコロニーの性状が違うのです。写真が手元にないので判断できかねるとは思うのですが, コロニーの性状は“ピンク色かさかさ”。生標本は酵母様で, カンジダとは違い, 出芽というよりは楕円形の細胞の間に仕切りがあるように見えました。アトラスで見ると, “Rhodotorula” によく似ていました。同定キットの結果はどこまで信頼できるものなのでしょうか??? また, “Rhodotorula” についての資料が探せなかったので, 教えていただきたいのですが。お忙しいとは存じますが, よろしくお願いいたします。

【回答】
 Fusariumは植物の病原菌となり,また一部はヒトの病原ともなりますが,空中に浮遊している糸状真菌です。気中菌糸を形成しますので一般に集落は毛羽だちますが,菌種,菌株,培養日数などにより,その程度は異なります。集落色は菌種によって,白,サーモン,スミレ,青などを呈します。顕微鏡下には,三日月形の大分生子,楕円形の小分生子,菌糸,場合によって厚膜胞子が観察されますが,大分生子を形成しないことが多く,小分生子は多数観察されます。小分生子は楕円形あるいは“いもむし様”形態で,隔壁 (しきり) をもつものもあります。
一方, Rhodotorulaは気中菌糸を形成しませんので,通常の酵母様集落を示し,集落色はサーモン,サンゴ色などを呈します。出芽によって増殖する菌種なので,顕微鏡下の形態は一方が鈍角,他端が鋭角のいわゆる酵母様形態を示します。また担子菌系酵母なので,ウレアーゼは陽性を示します。御質問の内容からはどちらともとれる要素が含まれ,断定できません。今一度,集落形態と顕微鏡下の形態を確認されては如何でしょうか。

(北里大学・阿部美知子)

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