■ 淋菌の薬剤感受性について
【質問】最近, STDが増加しそれに伴い, 私の検査室でも, 淋菌の検出率が上がっています。淋菌について, いくつか質問があります。お答え頂けたら幸いです。
・βーラクタマーゼ非産生株でペニシリンが効かないのは何故ですか?
 PPNGとは耐性獲得の方法でどこが異なるのですか?
・淋菌とクラミジアの混合感染の割合はどのくらいですか?
・また, 淋菌の単独感染, 上記の混合感染, その際の第1選択剤は?
・最後に, MICについて。NCCLSでは判定基準が決まってないと聞いたのですが
最近では, キノロン耐性菌も増え, 5割ほどではないかと思います。淋菌の感受性では頭を悩ませています。よろしくお願いします。

【回答】
1. βーラクタマーゼ非産生株でペニシリンが効かないのは何故ですか?
 PPNGとは耐性獲得の方法でどこが異なるのですか?
現在, 淋菌のペニシリン耐性機構は, ペニシリンを分解するβ-ラクタマーゼ酵素産生によるものとchromosomally - mediated resistance(CMR と略します)による耐性とに区別されています。このCMRは通常のβ-ラクタマーゼ試験では検出されません。CMRの推定試験は, β-ラクタマーゼが陰性でディスク拡散試験または寒天希釈法でペニシリンに耐性を示す株をCMRと判断します。このCMRの耐性機構は解明されていませんが, いずれにせよ淋菌が自分自身を守るために細胞壁合成酵素を遺伝子由来に変化させ, 薬剤との親和性を低下させているものと思われます。なお, プラスミドによる淋菌のテトラサイクリン耐性とは明らかに耐性機構は異なります。
 
2. 淋菌とクラミジアの混合感染の割合はどのくらいですか?
 諸家の報告によると, 淋菌性尿道炎の20〜30%にクラミジアの混合感染が確認されています。また, 最近の傾向としては, いわゆるprostituteよりも素人に多く見られます。

3. 淋菌の単独感染, 上記の混合感染, その際の第1選択剤は?
1) 淋菌の単独感染 (not PPNGの場合)
 一般的には, 感受性検査にて「感性」と判定された薬剤 (セフェム, ペニシリン)の3〜7日間投与で十分です。
2) 混合感染でキノロン耐性の場合
  ・Ceftriaxone (250 mg) 筋注1回 + ミノサイクリン200 mg分2, 7日間またはテトラサイクリン1 g 分4, 7日間
  ・Ceftriaxone (250 mg) 筋注1回 + ステアリン酸エリスロマイシン 800〜1200 mg 分4, 7日間
 *妊婦などでテトラサイクリンが使用できない場合に有効
  ・Cefixime 50〜100 mg 分2, 7日間 + ミノサイクリン(同上)
 *経口剤の組合わせ
 Ceftriaxoneの代りにSulbactam/Ampicillin(1.5 g)の筋注も有効です。さらに, 本年6月に発売予定のアジスロマイシンも極めて有効ですのでEMの代りになります。淋菌がキノロン感性でもクラミジアとの混合感染の場合は, キノロンを用いない方が治療効果が得られます。
 
4. MICについて。NCCLSでは判定基準が決まってないと聞いたのですが
 決まってはいませんが, Interpretive Standardとして下記の検査値が推奨されています。
 ディスク法: ペニシリン10単位含有を使用
       ≦26 mm: R; 27〜46 mm: I ; ≧47 mm: S
 MIC法: ≧2 μg/ml R; ≦0.06 μg/ml: S
 以上ご参考にして下さい。

(大阪大学・浅利 誠志)

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