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【質問】
細菌を顕微鏡観察する際, スライドグラスとカバーガラスの間に入れる封入剤は何を使用するのが一般的でしょうか???
また, 永久プレパラートを作ることも可能でしょうか???
染色は下記の染色液を使用しています。
グラム染色 = フェイバーG (日水製薬) ・・・B&Mワコーに変更予定
芽胞染色 = ウィルツ染色キット (武藤化学)
書籍やインターネットなどで調べてみましたが,「乾燥後, 観察する」としか記載してありませんでした。
なお, 真菌の観察は, 封入剤にラクトフェノール液, シール剤にネイルエナメルを使用しています。アドバイスをよろしくお願い致します。
【回答】
グラム染色標本はカバーグラスを懸けず鏡検 (100〜400倍率は乾燥系, 1,000倍率は油侵系レンズを使用)
しているのが一般的です。これはグラム染色標本の鏡検に限ったものではなく,
抗酸染色, ウイルツやメラーの芽胞染色, レイフソンの鞭毛染色, ヒスの莢膜染色,
ナイセルやアルバートの異染小体染色, そしてヒメネス染色などの特殊染色標本の鏡検でも同じです。これら染色標本は後日の再精査のためにも保管が大切ですが,
スライドグラスをそのままの状態で保管すると塗抹した材料が退色したり, 干からびて剥がれてしまいます。そこで用いられるのが封入剤であり,
一般には適量の封入剤をスライドグラス上に滴下し, カバーグラスで覆う方法が用いられています。封入剤には水溶性と非親水性のものがあり,
水溶性としてはグリセリンをリン酸緩衝液で適度に薄めたものを用います。この場合はカバーグラス周囲をネイルエナメルで固めます。この方法は蛍光抗体染色標本の鏡検
(蛍光顕微鏡使用) などに適していますが, グリセリン液の分布をうまく調整することが大切です。これに対して非親水性封入剤としては病理標本の封入で用いられるマリノールやエンテランなどが利用できます。マリノールの使用ではカバーグラス周囲のシールが不要であり,
便利です。ただし, キシレンに浸した後に直ちに封入することから, キシレンに溶解する物には利用できません。これら封入剤の屈折率は1.52〜1.57と言われており,
粘度が重要ですが, 一般の市販品には問題がないようです。また, カバーグラスの厚さも大切であり,
鏡検時の対物レンズはカバーグラスが0.17 mmの厚さのとき, 収差が最少になるように設計されているようです。
また, 真菌の胞子や菌糸をラクトフェノールコットン青液に混じ, カバーグラスを懸け,
弱拡大で鏡検しますが, このときにはカバ−グラス周囲をネイルエナメルで封じる方法が広く用いられています。
(大手前病院・山中喜代治)
【質問者からのお礼】
丁寧に説明して頂き, 有難うございました。大変参考になりました。
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