03/05/13
■ 細菌学の基本を教えてください
【質問】
 細菌学の基本的な質問ですが, 培養により生じたコロニーひとつを, 細菌一個体として見なして良いのはなぜですか??? 
それと, 培地における各成分 (デンプン, ペプトン, NaCl, 寒天) の役割を, それぞれ教えてください。

【回答】
ひとつの培養コロニーをひとつの個体とみなす理由
 “孤立集落”をつくる目的で平板培地に接種したとき, 単一の細胞 (培養前には見えない) が分裂増殖して肉眼的に観察可能な数に増え, コロニー (菌集落) をつくるため, 孤立した菌集落を構成する菌細胞はすべて, ひとつの菌細胞の子孫であるとみなされます。しかし実際には, 肉眼的に孤立した菌集落でも, たまたまふたつ以上の菌細胞が近接して接種されても, ひとつの菌集落をつくる可能性もあります。 

培地中の各成分の役割
(1) デンプン
菌発育の目的でデンプンを用いることはあまりありません。細菌学でデンプンを用いるのは, デンプン加水解試験です。

(2) ペプトン
 細菌の培養を目的に使用される多くの培地に含まれ, タンパクまたはタンパクを多量に含む成分で, 動物由来と植物由来に分けられます。筋肉, 肝, 血液,ミルク, カゼイン, ラクトアルブミン, ゼラチン, 大豆などを酸または酵素で加水分解したものです。原料, 製法によって組成は異なりますが, アミノ酸, ペプチド, 糖類や少量のビタミン類を含みます。また無機物としてアンモニア, リン酸と種々の金属類も含みます。主な役割としては窒素源および炭素源として細菌の発育に利用されます。 

(3) NaCl
 Na およびCl イオンは多くの細菌では特に必要としません。通常は培地の浸透圧を等張にする目的でNaCl が加えられます。高張培地では増殖抑制される塩感受性菌 (増殖可能なNaCl 濃度0〜4%), 高張培地で増殖可能な耐塩性菌 (0〜12%で増殖可能), および増殖にNaClを必要とする好塩菌 (一般に海水中に生息する細菌で, Vibrioなど) があります。

(4) 寒天
 テングサなどの海藻から調製される多糖体で, ほとんどの細菌は栄養源として利用することはありません。培地を固形, つまり培地の“固さ”を調製する目的で使われます。

 (琉球大学・仲宗根 勇)

[戻る]