02/12/09
■ なぜ寒天培地のシャーレを反対にひっくり返すのですか???
【質問】
 栄養学を勉強している学生です。
 実験の授業で寒天培地を用いて, 微生物の存在実験をおこなったのですが, なぜ, 寒天培地のシャーレを反対にひっくり返す (蓋を下にする) のか, どの資料を見ても, ただひっくり返すとの記載だけで, 理由がよくわかりません。詳しく知りたいと思い, メールをしました。
 学生の質問でもよろしいでしょうか。よろしくお願いします。

【回答】
 一般細菌の培養で, 寒天培地を入れたシャーレをひっくり返す理由はいくつかあります。

(1) 寒天培地表面への水滴の滴下防止: シャーレの蓋を上から被せてそのまま培養した場合には, 寒天から蒸発した水蒸気が蓋の内側に付着します。多量に付着した水分は最後に寒天培地表面へ浸透します。その結果, 培養コロニーが融合したり, 蓋に付着していた雑菌が寒天培地を汚染します。

(2) 寒天培地の乾燥を防ぐ: シャーレの蓋を上から被せて培養した場合, 蓋は軽いので, ふ卵器内の送風が隙間から入り込み, 培地表面を過度に乾燥させる恐れがあります。そこで寒天培地の重さで少しでも重量を得て, シャーレ内の密封度を高めます。しかしそのように培養しても, 培養シャーレ自体に送風が直接あたると培地の乾燥は避けられませんので注意下さい。

(3) 寒天培地を観察する時に便利: シャーレの蓋を上にしてふ卵器から取り出し, そのまま机の上に置いて, 寒天培地を観察する時を思い浮かべてください。まずシャーレの蓋を外し, 次に寒天を入れたシャーレを手にもって寒天培地を観察することになります。他方, シャーレの蓋をひっくり返して重ねた場合には, 裏返しになった寒天を入れたシャーレを片手で取り上げるだけで寒天培地の観察ができます。寒天培地を観察する時には, 蓋を外し, 寒天培地を手にもって, 寒天培地の表面を直接, しっかり観察してください。

(琉球大学・仲宗根 勇)

 先日, 「なぜシャーレを反対にひっくり返すのですか???」と質問したのですが, 学生の私にも大変わかりやすい回答をいただきまして, どうもありがとうございました。しっかり観察したいと思います。


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