■ 初代分離では結核菌が発育, でも薬剤感受性試験の培地では発育しない??? | |
【質問】結核菌で, 初代培養菌から薬剤感受性検査をすると, コントロール培地にも発育しない菌株があります(薬剤感受性検査は間接法でやっていましたが,
直接法も試してみました)。定期検査で何回か検体提出されていますが, 初代培養では菌が発育します。初代培養する培地と薬剤感受性検査をする培地はメーカーが違いますが,
今までそれで発育しなっかたという菌は思い当たりません。初代培養と同じメーカーの薬剤感受性培地も試してみようと思っています。他の検査センターへもお願いしてみました(結果はまだです)。こういう場合,
菌が発育しない原因はなにが考えられますか?継代のできない菌株というのは存在するのでしょうか?
【回答】分離できても, 感受性試験において菌発育陽性コントロール上の菌発育が不完全または発育が認められず判定できないケースとして,
既治療患者から分離された結核菌, 特に耐性結核菌が原因と考えられます。これらの菌は“劣勢発育菌″と称され,
従来の1%, 3%小川培地では極めて発育が悪く, 特に培地組成中のグリセリンおよびマラカイトグリーンにより発育阻害を受けます。そのため分離培地においてはグリセリン,
マラカイトグリーンの濃度を低くして結核菌への影響を極力低くした改良がなされております(2%小川やビット培地など)。更にこれらの培地には発育促進効果を目的に可溶性澱粉とピルビン酸ナトリウムが加えられていることから,
従来の小川培地に比べて, 菌検出および菌発育が良好と言えます。従って現行の薬剤感受性培地は1%小川培地を基礎培地としているため,
劣勢発育菌に対しての考慮が全くされていないことから, 「分離ができても感受性ができない」と言うケースが認められるものと考えます。
(極東製薬工業・岡沢 豊)
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