03/05/12
■ ガラス製注射器の消毒方法について
【質問】
 はじめまして。某病院で外来勤務をしている准看護師です。私の病院では恥ずかしながらまだ“ガラス製の注射器”を使用しています。患者に静脈内注射をした後, 水道水で洗い流して“ヂアミトール”という薬液にしばらく浸けています。そして最終的にはオートクレーブで滅菌します。でもヂアミトールはウイルスには無効だと記憶してます。この場合, 注射器を浸けておく消毒液は何が適しているのでしょうか??? それとも, オートクレーブで滅菌するので消毒液に浸けておく必要はないのでしょうか???
もう一つ質問です。注射器を滅菌するカストに, 金属製の舌圧子も一緒に入れて滅菌していましたが, 看護師さんから「汚いから一緒に入れないで」と言われました。やはり注射器と舌圧子は別々に滅菌した方がいいのでしょうか???
宜しくお願いします。

【回答】
 現在ではディスポーザブル注射器の使用が一般的になっていますが,私の病院では“ガラス製の注射器”が今でもオートクレーブで滅菌した後に再使用されています。ただしこれは注射用ではなく,ミルク注入用に使われているとのことです。“ヂアミトール”は第四級アンモニウム塩 (逆性石鹸または陽性石鹸とも呼ばれる) の仲間で,ご指摘のとおりウイルス,芽胞,結核菌には無効ですが,生体に対する刺激が少なく,価格が安く,金属に対しての腐食作用が少ないという利点もあります。“消毒と滅菌のガイドライン”(監修: 厚生省,へるす出版,1999) では,第四級アンモニウム塩に含まれる塩化ベンザルコニウムは0.1〜0.5% (w/v) の濃度で医療器材,床などの環境の消毒に用いるが,消毒薬自体の細菌汚染による感染の報告もあるとされています。しかし,ご質問の中でも既に質問者が述べられているように,このガラス製の注射器は最終的にオートクレーブで滅菌する訳ですから,わざわざ消毒液に浸けておく必要はないと考えられます。むしろ,オートクレーブのバリデーション (滅菌効果を実地に検証し,確実に設定した条件で滅菌されていることを確認する) が重要です。もちろん,滅菌を行う前に「汚れ」は完全に除去しなければなりません。血液・蛋白などの有機汚染物が残存したまま滅菌を行ってもその効果は充分に期待できないからです。

金属製の舌圧子も「汚れ」を完全にとれば,注射器と一緒に入れて滅菌することに特に問題はないと考えます。ただ, 「他人の血液が一度付着したものを口に入れるのは嫌だなぁ」という感覚は理解できますが・・・

(琉球大学・久田 友治)

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