03/06/27
04/01/13
■ 医療器具の消毒について
【質問】
身体障害者施設に勤める看護師です。感染委員会でいま業務の見直しをしているところですが, 創傷の処置に使用した器具の消毒について質問させていただきます。

オートクレーブで滅菌をする前段階として以前は, 使用した器具をそのままヒビテン液に浸けて, 数時間後に水洗いをしていました。ヒビテン液は一日に1〜2回ほど交換していましたが, 処置をした器具を次から次とヒビテン液に入れることは, ヒビテン液そのものが汚染されてしまい無意味である??? と聞いて, 「滅菌にかけるのだからヒビテンの消毒は中止にしよう」と決め, 使用した器具は直ぐに水洗いをして自然乾燥させてオートクレーブにかけることにしました。また, 処置時に使用した膿盆は直ぐに水洗いをして, 専用のタオルで拭いてから, 70パーセントのエタノールで拭いてから包交車に戻しています。ところが, 一部のスタッフから, 「膿盆の消毒をしないのは問題。いままでヒビテン液に浸けていたのに, 検査をしたわけではないし, 安全とはいえないのでは???」との意見が出ています。処置は擦過傷や気管切開が中心です。緑膿菌が3名とセラチア菌1名の保菌者がいます。質問は:

(1) 膿盆のヒビテン消毒は必要なのでしょうか???

(2) また検査をする必要性もあるのでしょうか???

(3) 処置時のセッシなど消毒する場合は, タンパク除去剤, 酵素剤に浸けるといいとの資料もあるようですが, 必要でしょうか???

よろしくお願いします。

【回答】
器具や環境の滅菌・消毒は,それぞれに求められる清浄度に応じて滅菌・消毒法を選ばなければならないと考えられています。患者ケアに用いられる器具は,それらが関与する感染リスクの程度によって表1の3つに分類されています (Spauldingの分類)。

[表1]

 また,CDCのガイドラインでは, 消毒の水準は滅菌,高水準消毒,中水準消毒,低水準消毒に分けられており,これらを総合して,APICのガイドラインでは器具分類と消毒水準を示しています (表2)。

[表2]

(1) 膿盆のヒビテン消毒は必要なのでしょうか??? 
 膿盆は健常な皮膚とは接触するが,粘膜とは接触しないので,ノンクリティカル器具であり,洗浄,清拭または低水準消毒を行うことになります。ノンクリティカル器具に消毒が必要となるのは,主に接触予防策が必要な場合であり,その他の場合には血液や体液が付着した場合などを除き特に必要性がないとされています。ヒビテンは一般名をグルコン酸クロルヘキシジンといい,低水準消毒薬に分類され,一方,エタノールは中水準消毒に分類されています。ですから,貴施設が“ヒビテン液に浸ける”代わりに“直ぐに水洗いをして, 専用のタオルで拭いてから, 70パーセントのエタノールで拭く方法”に変更したことは,むしろ洗浄・消毒の観点からいうと,高度になったと考えられます。当院では,通常は,テゴに浸けて,拭いて乾燥させて使っているとのことでした。結論を言うと,貴施設の方法で不十分ということはないと考えます。

 接触予防策の主な対象であるMRSAやVREは低水準消毒を適切に行えば殺菌することができるので,接触感染するウイルスを対象とする場合などを除き,感染症の種類によって消毒水準を区別する必要性はないとされています。

(2) また検査をする必要性もあるのでしょうか???
 細菌検査は必要ないと考えます。何故なら,たとえ膿盆や表1に示したノンクリティカル器具に細菌がついていたとしても通常は問題にならないでしょうから。

(3) 処置時のセッシなど消毒する場合は, タンパク除去剤, 酵素剤に浸けるとい
いとの資料もあるようですが, 必要でしょうか???
 手術器具は確かにタンパク除去剤, 酵素剤に浸けていますが,これは多量に血液などがついているのを効率的に除去するためだと思います。処置に使うセッシなどは,血液の付着はあっても少量なので,タンパク除去剤, 酵素剤は不要ではないでしょうか。

(琉球大学・久田 友治)

【質問者からのお礼】
 お忙しいところ, ご回答ありがとうございました。また質問させていただく時にはよろしくおねがいします。それから, 急き立てるようにメールしまして大変失礼しました。


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