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【質問】
○×食品株式会社の研究所で細菌検査を担当しております。検査対象は主にふりかけとその原料です。一般生菌数,
大腸菌群, 大腸菌, 真菌類, 黄色ブドウ球菌などの検査を行っております。
早速ですが質問です。 黄色ブドウ球菌の検査に日水製薬さんの食塩卵寒天基礎培地を使用しておりますが,
卵黄反応陽性の白いコロニーが生える事がよくあります。黄色いコロニーなら黄色ブドウ球菌ですが,
白いので何か判別できません。コロニーの形は正円ではなく, 縁が細かく波状になった円形です。今までずっと白色ブドウ球菌だと思っていたのですが,
白色ブドウ球菌は卵黄反応陰性だという事を今知り, ではこれは何なのかという疑問が湧いてきました。
宜しくお願いいたします。
【回答】
食塩卵寒天基礎培地 (ニッスイ) に卵黄液を加えた平板培地をお使いだと思いますが,
他社製品を含め, 同様の培地に共通した現象だと思います。これらの培地には高濃度に塩化ナトリウムが含まれており,
耐塩性菌を選択的に分離するよう工夫しており, さらに卵黄反応とマンニット分解能で菌種の推定鑑別が出来る特徴ももっています。主にブドウ球菌分離用として利用されており,
一般的に黄色ブドウ球菌の多くが黄色〜クリーム色集落として出現し, マンニット分解と卵黄反応による集落周囲の黄色化と白濁・真珠様光沢が認められます。これに対し表皮ブドウ球菌など,
黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌各菌種は白色円形集落で, 集落周囲は無変化の場合がほとんどです。ただし,
これはあくまでも標準的変化であり, 菌株によっては典型的集落を示さない場合があることを知っておくことが大切です。今回の質問では,
卵黄反応陽性で白色, 辺縁が波状円形集落とのことであり, この情報から推定できるのは芽胞を持ったグラム陽性桿菌Bacillus属であり,
Bacillus cereusの可能性が高いと思います。Bacillus属は7%の食塩を含む培地でも発育しますし,
B. cereusはマンニット非分解, 卵黄反応陽性で白色〜灰白色, 辺縁波状、やや大きめの集落を形成します。
いずれにしても見慣れない集落, 非典型的集落が出現した場合はグラム染色による鏡検を実施するとともに,
各種の性状試験による同定検査を行い確認することが大切です。たぶん日常検査としては集落観察のみで判断しているものと推察していますが,
食品原料などからは日常予想できない微生物が突然出現することもあろうかと思われますので,
一度は詳細な検討をお奨め致します。
なお参考までに, 食材検査に関わる日水製薬のホームページとカスタマーサポート課のアドレスを下記に記しておきますので利用されたらいかがでしょうか。
日水製薬(株)コスモ会ホームページ <http://www.cosmokai.com/>
日水製薬(株)カスタマーサポート課 <customer@nissui-pharm.co.jp>
(大手前病院・山中喜代治)
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