02/08/26
■ 食品中の死菌と日和見感染
【質問】
 食品メーカーで衛生検査を担当しております。殺菌前の中間製品の検査でNGKG培地に生育する菌があり, 気にしております。精査した結果, セレウスではありませんでしたが, 検出されるコロニーの多くがPseudomonas fluorescens であり, 稀にStenotrophomonas maltophiliaが見つかります。菌数レベルはグラムあたり10の3乗以下で, 最終製品は高温殺菌されているのでまったく検出されません (グラム10個未満)。原料に遡った結果, 洗浄や冷却に使う水にこれらの菌が含まれていることが判りました。そこで水は紫外線殺菌器を通して使用するよう改善しました。加熱殺菌しておりますし, 一般細菌として扱えば製品としてはまったく問題ない筈なのですが, これらの菌は日和見感染の例や院内感染の報告もあるようなので, 死菌体として含まれる場合には本当に気にしなくて良いものか心配しております。医療関係に詳しい先生方のご意見を伺いたく質問させて頂きます。

【回答】
 まず, 質問にありますPseudomonas fluorescensStenotrophomonas maltophiliaを含め, すべての微生物は日和見感染や院内感染の原因になると考えてください。しかしこれらの微生物が食品に含まれていると想定しても, 実際に日和見感染や院内感染の直接の原因となる場合は極めて稀であり, むしろ“ない”と考えられます。まして, 加熱殺菌して死菌としてのみ検出されるのであれば, まったく感染源としては無視できます。医療機関では, 食品中に含まれる微生物が特に問題となる患者 (例えば骨髄移植した患者など) には“生もの”を飲食しないようにしています。

(琉球大学・山根 誠久)

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