02/12/24
■ 食肉から検出された“Lactobacillus pentosus
【質問】
 こんにちは。職業は食肉の輸入販売業をしております。
 当社は海外に豚の産地を持っており, 工場でカットして, 日本に持ってきて販売しているのですが, 今回お客様から, 豚肉からニオイが発生するというクレームを受けました。検査機関に問い合わせ, 検査したところ, 乳酸菌数が非常に高い数値を記録しました。そこで乳酸菌の中の何が多いのか調べたところ, “Lactobacillus pentosus”が特に多いことがわかりました。ただ検査機関のほうからは, これがどういった種類のものかはわからないといわれています。できればLactobacillus pentosusがどういったもので, どのような時, どのような場所で繁殖し, どうすれば発生防止, または駆逐できるか知りたいと思います。どうか教えて頂けないでしょうか。またこの種のことは, どういったところに問い合わせるのが良いか教えていただけないでしょうか。よろしくお願い致します。

【回答】
 Lactobacillus pentosusは50菌種以上を包括するLactobacillus属の1菌種であり, 1.0〜1.2×2.0〜4.0μmのコリネ型 (ペアまたはレンサ状) グラム陽性短桿菌です。通性嫌気性, 非運動性, 非抗酸性, 無芽胞で, 10〜40℃で発育するが45℃では発育せず, 至適pHは6.4付近と言われています。9%の食塩濃度にも耐性を示し, カタラーゼ陰性, グルコース, ガラクトース, シュクロースを分解します。近縁菌種Lactobacillus plantarumとの鑑別はグリセロールとキシロースの分解能でありL. pentosusはいずれも陽性です。

 L. pentosusは植物, 乳製品, 肉類, 魚介類, 人の腸管など広域に生息しており, 多くの場合非病原性といわれています《L. pentosusType strain (NCDO363)はとうもろこしのサイロから発見》。さらに他の乳酸菌 (L. acidophilus, L brevis, L. buchneri, L. bulgaricus, L. casei, L. fermentum, L. helveticus, L. plantarum, L. salivariusなど) と同様, ヨーグルトなどの製造にも利用されています。L. pentosusを利用した製品のひとつにベジラクト-Eがあり, (1) 悪玉菌の増殖を抑え整腸効果を高める, (2) ビタミン類を作り, 免疫力を活性化する, (3) 便秘を改善する, (4) 胃酸に抵抗性で腸での定着率が高いなどの効用が紹介されています。故に, この菌種は健康食品として有効活用されてこそ値打ちのあるものであり, 食肉などの原材料中での異常増殖はかえって風味をそこなうことになるものと考えます。ですから, 適正な解体と保存, 流通経路における取り扱い上の注意を良く守って消費者に提供することが基本原則ではないでしょうか。

 詳細は食品添加物スターターカルチャー, または日本ビフィズス菌センターにお問い合わせください。

(大手前病院・山中喜代治)

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