01/07/05
■ 微生物の光走性の検討方法
【質問】私,○×大学工学部機械工学科の者です。現在,微生物,主に原生生物の光走性に関することを調べています。このような小さな生物の光走性を検討するにはどのような実験方法があるのでしょうか。今,私が行っている実験方法はシャーレや実験用に作った小さなプールにハロゲンを当てて巨視的に指向性光走性や驚動性光走性を観察しています。突然のメールによる質問, 大変申し訳なく思っております。失礼致します。

【回答】
 微生物の光走性を調べるには, 大きくわけて次ぎの二つの方法があると思います。
1) 個々の微生物の運動軌跡を測定する。
2) 微生物集団の集合や離散を定量的に測定する。
 ここで, 1)の場合は, 光のあり・なしなどの条件下で, ビデオカメラを使って微生物の運動軌跡を画像として取得するというものです。微生物の大きさや運動の速度の違いにより, 顕微鏡の種類や照明法 (例えば暗視野照明法など)の 検討が必要です。また, 2)の方法は, 光をあてた部分と当てない部分で微生物数を計数するなどの手順によるかと思います。この場合も顕微鏡用のカメラやビデオカメラがあると便利です。それから, 寒天培地上で増殖・運動する微生物なら, シャーレの半分を遮光して比較することも可能ではないかと思います。
 以下の光走性を研究している研究者の論文を参考にして下さい。
1) については;
Matsuoka, T.: Negative phototaxis in Blepharisma japonicum. J. Protozool. 30, 409〜414, 1983.
2) については;
Tsuda, T. and Matsuoka, T: The cells of Blepharisma can detect light direction. Microbios 77, 153〜160, 1994.
また, 運動軌跡の測定に関するものでは;
Muto, Y. and Kohidai, L.: Image analysis for recording cell locomotion, 岐阜大学医療技術短期大学部紀要 5, 87〜93, 1999
その他参考資料
1) 野沢義則編「原生動物細胞―医学生物学の実験系として」p 61〜70 講談社サイエンティフィク (1981年)
2) 重中義信監修「原生動物の観察と実験法」p 181〜190 共立出版 (1988年)
おそらく微生物の種類によっては, さらに工夫を要するのかもしれません。

(岐阜大学・武藤吉徳)

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