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【質問】
いつも勉強させていただいております。私の質問にも答えていただければ幸いです。
質問内容: 緑膿菌などの日和見感染菌は正常な腸内細菌叢をもつ動物では問題になりませんが,
SPF動物など単純な腸内細菌叢をもつ動物では一度体内に入ると濃厚感染すると聞きます。なぜこのようなことになるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
【回答】
ヒトや動物は自然界では極めて多種類の微生物と共存しております。同様にヒトや動物の腸管内には腸内細菌叢が形成され,
少なくとも100以上の菌種からなり, 我々の健康維持に極めて重要な働きをしています。しかしながら,
この腸内細菌叢も長期にわたり抗菌剤を連用すると, 感受性菌が死滅し, 耐性菌のみが生き残ることから菌交代現象が起こります。このような菌交代現象では,
続いて菌交代症という特定の細菌による感染が生じてくることが良く知られています。本来腸管内は,
多数の腸内細菌がバランスを保ち生活をしており, 外部から病原菌が侵入してきても,
これら常在菌 (腸内細菌) の攻撃を受け, 侵入者は容易には定着し, 感染することはできません。これも完成された腸内細菌叢のお陰です。腸内細菌の未熟な乳児では,
成人と比べて外界から侵入してきた病原菌によって感染を起こす比率が高くなっています。これと同様のことが,
腸内細菌叢が単純 (未熟) なSPFの動物にも認められます。ヒトや動物は有菌環境で生息し,
微生物と共存することから, 抵抗力を獲得して行きます。当然, 無菌環境で育った動物は,
病原微生物に対する抵抗力は弱くなります。
(近畿大学・古田 格)
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