04/01/16
■黄色ブドウ球菌と大腸菌群の検査方法について
【質問】

 はじめまして。いつも臨床微生物迅速診断研究会の質問箱を見せていただいています。今日は教えていただきたいことがあり, メールを送らせていただきました。私は食品工場で細菌検査をしています。教えていただきたいことは以下の内容です。

(1) “黄色ブドウ球菌の検査”について, 現在は10倍希釈試料液0.2 mlを卵黄加マンニット食塩寒天培地に塗抹して培養しています。“この方法では, 商品中に黄色ブドウ球菌が微量に存在した場合は検出できない”との指摘を受けて, 増菌法を調べています。しかし, 書籍・インターネットなどを調べてもよくわかりません。“どの培地を使用して, どういう方法で行えばよいか”を教えてください。また, 増菌法を行うことは日常の商品の品質管理に適しているのでしょうか???

(2) “大腸菌群の検査”についても, 上記と同様の理由で増菌法 (BGLB培地を用いた定性試験) を行う必要があるのではないかと言われています。現在は, デソキシコレート寒天培地を用いて混釈法で行っています。これも, 増菌法を行うことは日常の商品の品質管理に適しているのでしょうか???

 お忙しいところ申し訳ございませんが, よろしくお願いいたします。自社の状況を説明しますと, 業種は和菓子 (団子・大福などの生菓子) 製造業です。日常, 栄研化学 (器材) と日水製薬の培地を使用しています。

【回答】

質問 (1)

 増菌培養に用いる培地は市販のトリプチケ−ス・ペプトン・ブイヨンに食塩を加え, 最終濃度を7.5%にした培地です。通常は, 10 mlの培地に試料を1 ml (10倍乳剤: 50 gramサンプル+450 ml希釈液) 加え, 35〜37℃で48時間培養した培養液から, 10マイクロの白金耳で卵黄加マンニット食塩寒天培地に画線塗抹し, 培養します。各社によって品質管理の方法はまちまちだと考えられます。製造されている製品の細菌叢や製造環境が各社でまちまちであるためです。黄色ブドウ球菌は, 皮膚 (特に化膿病巣), 鼻前庭, 咽頭に多く認められます。食品製造業においては, 従業員の保菌者の把握も重要だと考えられます。日常の黄色ブドウ球菌の検査は従来から実施されている方法でよいと思いますが, 5回に1回あるいは10回に1回の頻度で“増菌培養法”を用いて日常検査の裏付けデ−タにしたら如何でしょうか。

質問 (2)

 BGLB培地を使用し, ガス産生の有無を確認した後, EMB培地で金属光沢集落を確認します。その後で純培養し, IMVIC試験を行い, 大腸菌群に属する細菌か否かを判定します。現在, デソキシコレ−ト寒天培地を使っているとのことですが, “あんこ”の残渣や食品残渣が入った場合, 菌数測定が困難になることはないですか。一日に行う検体数にもよりますが, BGLB培地も併用してみたら如何でしょうか。さらに, 菌数を知りたい場合はMPN法をお勧めします。

(日水製薬・小高 秀正)

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