03/09/02
03/09/05
■ 血液培養から同定された“Streptococcus adjacens
【質問】
 検査センターの細菌検査担当検査技師です。血液培養から“Streptococcus adiacens”が検出されました。チョコレート寒天培地にのみα溶血をして発育していました。まったく検出の経験がないため, 菌種名の予想もつかず, 苦慮しました。血液からのグラム染色では「グラム陽性球菌」でしたが, チョコレート寒天からは「グラム陰性短桿菌」に見えてしまい, 混乱しました。寒天培地上では菌の発育が遅いため, 血液培養ボトルから集菌し, 同定キットで結果を得ました。“Streptococcus adiacens”について調べて, その性状が今回検出された菌と同じであることを確認して臨床に報告しました。調べている過程で, nutritional variant streptococci, Abiotrophia属という言葉がありましたが, なかなか詳しい資料がなく, 充分に理解できません。グラム染色性が変わってしまうのは発育した培地の影響でしょうか??? それとも, この菌の特徴でしょうか???是非, この菌種について詳しく教えてください。今後の検出, 同定の参考にしたいと思います。よろしくお願いします。

【回答】
 竹内らはGranulicatella adiacens のグラム染色所見は“グラム不定”の球桿菌あるいは短桿菌様などの形態を示すが, 継代によりグラム陽性球菌となると報告しています。この理由は明確ではありませんが, 私見では, 特異な栄養要求をもつ本菌が, グラム陽性球菌の形態を示すまでにはin vitro (培地) への適応に世代を重ねる必要があることも一因と考えます。本菌属, あるいはAbiotrophia defectiva の分離・鑑別などについては下記の文献が参考になると思います。

[参考文献]

  1. 江成 博, 他: 検査材料からStreptococcus adjacensを分離するための培地についての検討. 日本臨床微生物学雑誌5: 30〜36, 1995.
  2. 江成唯子: Nutritionally variant streptococciと臨床検査. 日本臨床微生物学雑誌 6: 43〜45, 1996.
  3. 竹内弘明, 他: Streptococcus adjacensによる感染性心内膜炎の1例. 日本臨床微生物学雑誌 6: 46〜50, 1996.
  4. 佐藤智明, 他: 血液培養からのnutritionally variant streptococciの分離経験. 日本臨床微生物学雑誌 6: 51〜55, 1996.
(極東製薬工業・江成 博)
【質問者からのお礼】
 ご回答, ありがとうございました。早速, ご紹介いただいた文献を検索してみます。この次にStreptococcus adjacensが検出されたときは, 戸惑わずに対応できるよう, しっかり情報を蓄えておきます。ありがとうございました。
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