■ TCBS寒天培地に黄色の菌集落が・・・ | |
【質問】
たらこ・明太子の製造会社で品質管理をしています。食中毒菌検査として, 腸炎ビブリオの検査をMPN法で行っています。TCBS寒天培地に発育する菌集落についての質問なのですが, 頻繁に黄色の集落が見られ, ごくまれにですが, 1 gram当たりのMPNが100以上になるときもあります。検査方法を教わった方には, 緑色のコロニーを注目していればいいから・・・と, 黄色のコロニーは関係のないように言われました。ですが, 食中毒を起こすNAGビブリオやV. fluvialisは黄色のコロニーを作るとあり, 少々不安になっています。それ以上の検査をしてそのコロニーを同定することは出来ないので, その菌が食中毒菌かも分からないでいます。そう頻繁に食中毒菌が存在していいものか・・・とも思いますし。写真がないのですが, 黄色もしくはクリーム色の小さなコロニーがよく検出されます。詳しく調べてもらったほうがいいのでしょうか??? それとも問題はないのでしょうか??? 教えてください。お願いします。 【回答】
さて, この TCBS 寒天培地に発育する黄色のコロニ−についてですが, ご指摘のように NAG ビブリオや V. fluvialis 以外にも V. furnissii などの Vibrio 属菌の発育は当然のことながら考えられます。また食中毒の起因菌種としても知られているAeromonas 属菌の発育もあり得ます。また, TCBS 寒天培地は確かに選択性に優れていますが, 腸内細菌科の菌種の発育も稀ではありません。黄色のコロニ−を形成する腸内細菌科の菌種で比較的に頻度が多いと思われるのは, Proteus vulgaris とKlebsiella pneumoniae を挙げることが出来ます。特に後者の K. pneumoniae はコロニ−の大きさも V. choleae に酷似しているのできちんとした鑑別が必要です。また極く稀ではありますが, Enterococcus 属菌が黄色のコロニ−を形成することもあります。 以上述べてきましたが, Vibrio 属の V. fluvialis や V. furnissii , NAG ビブリオは当然のことながら発育してきます。黄色コロニ−を形成する腸内細菌科の特にKlebsiella 属菌, Proteus 属菌や Enterococcus 属菌はもちろん, 培養一日目で発育してくる場合もありますが, 二日目の場合の方が多いようです。しかし, TCBS 寒天培地の状態にすべて依存します。つまり, 培地作成直後の新鮮な TCBS 寒天培地では上述の菌の発育は少ないようです。培地作成から日数を経過するほど, 経験的にですが, 選択性が落ちてくる傾向が見受けられ, 培養一日目でも発育が観察されることが多くなります。また, 同じ TCBS 寒天培地でも, メ−カ−によって選択性に差があることも知られています。いずれにしても, 黄色のコロニ−が出現したら, グラム染色とオキシダ−ゼ試験でスクリ−ニングをして, 怪しいときにはキチンと同定試験を依頼することが肝要と考えます。 (信州大学・川上 由行)
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