03/01/29
■ 熱心に手洗いした手がより汚染されている???
【質問】
 初めまして。私は惣菜のテナントやベーカリー, 飲食店を展開する会社で品質管理を担当する者です。社内には, 店舗の衛生を巡回してチェックするプロジェクトがあり, その業務の一環として“手洗いの徹底”に役立てる目的で, 従業員の手指の拭き取り検査を行ない, 菌数に応じて評価基準を設け, 現場に結果を返しています。年に6回行なう予定の内, 既に4回は終了しています。店舗数が約60あり, 1回の巡回につき, 1店舗当たり1人の手指をふき取って, 延べ240人の手指を検査したことになります。拭き取りの条件は, 指定の薬用石けん (サラヤのシャボネット) で洗浄した後, 水分を十分に除去してからアルコールによる殺菌を行なった状態です。ただし, あくまで個人の現状の洗い方を見るためなので, 念入りに洗う人もいれば, 簡単に済ませてしまう人もおり, 費やす時間には個人差があります。拭き取りを行うのは多くは私ですが, 巡回の都合上, プロジェクト内で二手に分かれるような時には, もう一人に拭き取り方法を教えて行なってもらっております。持ち帰った検体で検査を行なうのは私のみです。拭き取りには, 栄研化学の「ふきふきチェック」という拭き取りキットを使用しております。プラスチック容器にリン酸緩衝液が入っており, 綿棒がキャップと一体になっている便利な検査用品です。

 さて本題ですが, これまでに行なってきた拭き取り検査の結果に疑問を感じたので質問させて頂きます。

 (1) 手を軽く洗った人 (石けんをつけて軽くこする程度で, すぐにすすぐようなやり方) の手からは菌が少なく, 逆に念入りに洗った人 (手洗い方法として推奨されている, 爪ブラシの使用と30秒くらい洗うやり方) の手からは100個/cm2以上の菌が検出されてしまう現象が起こる原因は???

(2) 手を洗う手順はあるのですが, 石けんをつける, すすぐ, 殺菌消毒するといった過程のどこに重点を置いてやるとよいのか??? (指導の際に疑問に思っています)

 特に, (1) については, 手洗いの認識が低い人に限ってよい結果になってしまうことが多々あり, 非常に疑問です。真面目に洗った人が納得できる内容であると非常にありがたく思います。

 お忙しいところ恐縮ですが, どうか宜しくお願いします。

【回答】
 簡単に回答します。

 (1) の質問については, “よく手を洗う人は手荒れをしやすい”傾向があります。手荒れをしていると皮膚の常在菌の数が増えるため, 検査前に手荒れの状況を確認することが必要です。

 (2) については, どの手順にも重点をおく必要があると思います。石けんと流水ですすぐことは手指に一過性に付着した細菌を洗い流す目的です。また殺菌消毒は, 細菌の量が少なくないと効果が発揮できないので, まず石けんと流水ですすいで細菌の量を減らし, 次に殺菌消毒をすることが効果的と思います。この方法で行うと, サラヤのシャボネットはプレーン石けんの成分でいいと思います。シャボネットにアルコールやイルガサンなどを混入していると逆に“手荒れ”を助長しますので確認して下さい。

(愛媛大学・村上 早苗)

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