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【質問】現在当院入院中の患者ですが, 健康診断で右肺に所見を認め入院となりました。糖尿病でも治療中です。喀痰の塗抹検査
(陰性), LCR (陽性), 培養 (陰性)です。何度検査してもLCRは陽性なのですが,
培養では検出されません。死菌でも陽性になると文献には書いてあるのですが,
以前に結核の治療をしたことはありません。菌量が少なくて培養法では検出されないのかとも考えましたが、胸部写真では病変はかなりの範囲で,
結核だとすると培養で菌が検出されないのはおかしいというのが, 当院の先生方の考えです。なぜLCRだけが陽性にでるのか説明のしようがなくて困っています。陳旧性の結核でLCR陽性だとするといつごろまで陽性にでるのでしょうか。
【回答】
今回のケースは, LCR検査の偽陽性か培養検査の偽陰性かということですが,
以下に両者の可能性について述べます。
1. LCR検査の偽陽性の可能性
まず, クロスコンタミネーションが考えられます。しかしながら, 「何度検査をしても陽性」ということですから,
これは考えにくいと思います。次に, 死菌である場合は当然このようになりますが,
通常, 治療中あるいは治療終了後の患者でみられることであります。この患者は治療の既往がないということですので,
これも考えにくいことです。治療の既往がない陳旧性結核患者から死菌が排菌されて,
このような結果を示すことは通常ありません。いずれにしても, LCR検査の偽陽性の可能性は低いと考えられます。念のために,
PCR検査などの他の遺伝子増幅法を行ってみたらいかがでしょう。
2. 培養検査の偽陰性の可能性
前処理が強すぎて結核菌が死滅する場合と, 培地の支持力(培養能力)が十分でない場合が考えられます。前者の可能性を考え前処理法を検討することと,
貴施設での培養汚染率を集計して下さい。抗酸菌培養検査の汚染率は3〜5%が適切とされています。それより汚染率が低いのであれば,
前処理が強すぎると思われ, 再検討する必要があります。
後者の可能性は小川培地などの固形培地を使用しているのであれば, 考えられることであります。小川培地の支持力は液体培地に比し有意に低いと言われてます。液体培地での培養を試行して下さい。
3. その他
糖尿病があり, 胸部レントゲンで広範囲に異常陰影が存在し, 臨床医も結核症を疑っているという状況から,
2の培養検査の偽陰性の可能性を考えたいところです。塗抹検査を再度注意深く観察すること,
液体培地を使用することの2点を勧めます。
(京都大学・一山 智)
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