04/04/01
04/04/12
■ 鳥インフルエンザに感染した鳥の処理方法
【質問】
 こんにちは。私は大学で細菌の研究をしています。最近, 鳥インフルエンザの感染が国内で広がりを見せているようですが, 感染した鳥 (主に鶏でしょうか) の処分の仕方と施設の洗浄について疑問をもちました。

 感染した鶏は, ビニールの袋のような物に詰め込まれて, 感染の発生した施設周辺に穴を掘って埋めるという処理を行っている映像をニュースでみました。世界各地での鳥インフルエンザ報道を見ても, ビニール袋に入れて埋めていました。ウイルスを拡散させないことを第一に考えて, 発症した鶏を移動させないというのが基本なのだろうと思いますが, 「ビニール袋に入れて埋める」というのは本当に最善の処置なのだろうか??? と気になりました。ビニールに入れたら, 土に埋めても, 微生物が分解し難くなると思いますし, あの処理方法は単に「埋め立てているだけ」で病原体に対する根本的な解決にはなっていないように感じます。もし年月が経って, その土を掘り返したりしても, 安全なのでしょうか??? (ビニールに包まれた鳥の死骸でウイルスが生存し続けることはないのでしょうか???)

 また, インフルエンザ発症施設に撒いている“液体”はなんでしょうか??? また, 噴霧器で撒くような方法で施設内のウイルスを殺すことが出来ているのでしょうか??? 教えて下さい。よろしくお願いいたします。

【回答】
 私も詳しくはわかりませんが,消毒剤の方は“パコマ”をJRA競走馬総合研究所栃木支所 (ウマの感染症の対策のための施設) では使っています。これは車のタイヤのウイルス除去に用いられるものですが, “逆性洗剤”です。下記のURLにクリックしていただければわかりますが,逆性洗剤が一番あり得ると思います.

http://www.meiji.co.jp/agriculture/livestock/pacoma/pacoma.html]
 ニワトリを焼却処分にするというのがいいかもしれませんが,実際には数万羽の焼却となればその臭いもきついでしょうし,大変な作業になります。私が担当しているわけではないので,あまり正確ではありませんが,インフルエンザウイルスはバクテリアと違って死んだ宿主では増えないということが重要です。生きた細胞に感染し,そこで増殖することはできますが,バクテリアのように自分で増殖することはできないからです。また,埋めて時間が経てば,ニワトリが腐り,その腐乱時に発生する熱はかなりの温度になると聞いたことがあります。その熱で生き残っていたウイルスも死滅するということのようです。
(JRA競走馬総合研究所・杉田 繁夫)


【質問者からのお礼】
 鳥インフルエンザに罹った鶏の処分法について, 詳しくご回答いただきありがとうございました。インフルエンザウイルスが生きた細胞でないと増殖できないこと, また埋め立てた鶏の腐敗による発熱でウイルスが死滅することを聞き, とても勉強になりました。今後は, 何よりも感染経路の解明と予防法について研究が進むことを願っています。

【読者からの追加回答】
 鳥インフルエンザに感染した鳥の処理方法について, 既に杉田先生がご回答くださっていますが,ちょっと違う視点からコメントします。
 鳥インフルエンザもそうですが,様々な疾病の防疫活動を行う場合,必ず根拠法令が存在します。主な法律は「家畜伝染病予防法」ですが,今回のように社会的に反響,ダメージの大きい疾病の場合,特殊事例として“マニュアル”を作成することがあります。「高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアル」がそれにあたり,その中に消毒方法や埋却方法も記載されています[http://www.maff.go.jp/tori/manual.pdf]。確かに「埋めるだけ」なのですが,病原体の拡散防止と土壌および水系汚染の予防からこういう方法はよくとられます。ウイルスは基本的に生きた細胞がないと増殖できませんし,インフルエンザの場合,単体では20℃で7日間程度しか活性が持たないとされていますので,埋めてしばらくすれば, 死滅するはずです。基本的に熱にも弱いですし。
 消毒薬は逆性石けんがよく用いられます。商品名でいえばパコマとか,アストップとかオスバンとか。動力噴霧器で撒くとわかるのですが,結構“びしょびしょ”になりますので,ウイルスは接触すれば死滅してしまいます。上のマニュアルにはそれ以外の消毒薬も記載されています。ウイルスの種類によっては, 逆性石けんは効果がなく,違う消毒薬を用いる場合もあります。

(三重県・獣医師)

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