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【質問】
こんにちは, 微生物学について質問がありまして, メールさせて頂きました。宜しくお願いします。
私は大学生です。
通性嫌気性細菌を培養したいと思っています。しかし, 通性嫌気性細菌は酸素があっても育ち,
酸素がなくても育つ細菌であるので, 好気条件で培養したら良いのか, 嫌気条件で培養したら良いのかわかりません。嫌気条件で培養した後に,
生き残った細菌を好気条件で培養し, そこで、生き残った細菌が通性嫌気性細菌なのでしょうか。それとも,
通性嫌気性細菌が育つ条件 (温度や酸素の量など) が定義付けされているのでしょうか。通性嫌気性細菌の培養方法を教えてください。お願いします。
【回答】
ある検体の中にいる細菌を培養する場合に, われわれは次の4つの培養環境のいずれか,
あるいはそれらの総べてを用います。(1) フラン器 (酸素 21%, 炭酸ガス 0.5%以下),
(2) 炭酸ガス培養器 (酸素約15%, 炭酸ガス 5%), (3) 微好気性培養器 (酸素5%,
炭酸ガス 10%), (4) 嫌気性培養器 (酸素 0%, 炭酸ガス 5%以上) の4つです。
栄養が充分であれば, 嫌気性菌に分類されている細菌は (4) に発育しますが,
(3), (2), (1) にはほとんどは発育しません。これが偏性嫌気性菌 (嫌気性菌)
です。通性嫌気性菌 (好気性菌) は, (1), (2), (3), (4)のどれでも, 栄養が十分であれば,
ほぼ同程度に発育します。栄養が充分であっても, (2) でだけでしか発育しないカプノフィリックな菌もあります。栄養が充分であっても,
(3) でだけしか発育しない微好気性の菌があります。また, (1) でよく発育しますが,
(2), (3) となると極端に発育が悪くなる偏性好気性菌もあります。
質問の目的がよく分らない点がありますが, 通性嫌気性菌を培養するなら,
先ず (1) で培養して下さい。その場合, 目的とする細菌の栄養要求性を考えて,
どのような培地を使うか決めて下さい。栄養が十分なものがよいでしょう。そして,
低温菌, 中温菌, 高温菌 (細菌学のテキストブック参照) のどれを培養するのかを考えて,
培養温度を設定して下さい。中温菌の場合には35〜37℃を使います。ただし, 初代分離の場合には,
(4) でしか発育しない通性嫌気性菌もあります。そのような菌を対象とする場合には,
最初に, (4) で培養し, 発育したものを, (1) で培養すればよいでしょう。嫌気性菌は何回培養をくり返しても,
(1) では発育しないのがふつうです。目的によって, 選択して下さい。
(岐阜大学・渡邉邦友)
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