02/10/30
■ 薄く染まるグラム陽性桿菌
【質問】
 グラム染色陽性に“薄く染まる桿菌”はGenus Mycobacteriaceae以外に何がありますか???

【回答】
 細胞を色素で染め, 光の屈折率を利用した色の濃淡から細菌を分別工夫したのは19世紀後半であり, 細菌細胞の特質と色素との吸着性および化学的親和性に基づく染色理論には各説 (物理的説, 化学的説, 固溶説, コロイド) が唱えられてきました。これに基づき行なわれる染色手順の中では染色に影響を及ぼすいくつかの因子 (標本作製, 固定操作, 染色液, ヨウ素の作用, 脱色, 水洗) が微妙に関わってきます。故に, すべての細菌が一様に染まることは望めないことであり, 特に菌種によって特異成分を保有する場合には特殊な工夫 (加温など) が必要になります。

 ご質問にあるMycobacteriaceaeも疎水性や抗酸性を規定するミコール酸, コードファクターと呼ばれる脂質を含んでいることから難染色性であり, 一般的なグラム染色では色素が浸透しにくく薄く染まることになります。これ以外には細胞内に40_60の炭素側鎖のミコール酸様特殊脂質を持つNocardia spp.や条件によって菌体の一部が陽性度の低くくなるActinomyces spp., そして菌体が不平等できれぎれに顆粒状に薄くそまるCorynebacterium spp.などが知られています。さらに嫌気性菌のClostridium spp.は一次染色液が脱色されやすく, 陰性色が強くでる場合や微妙な色調を示す場合には陽性色が薄く観察されることもあります。また, 桿菌ではありませんがGemella haemolysansは本来グラム陽性球菌に分類されているにもかかわらず, 脱色されやすいことからグラム不定としてしばしばグラム陰性菌のコーナーでも紹介されています。故にこの菌もグラム陽性色が薄く見られる傾向にあります。

 以上, ごく一般的に知られている菌種を紹介しましたが, グラム染色の方法によっては, かなり違って染まりますので, いくつかの方法で試されてみてはいかがでしょうか。

(大手前病院 山中喜代治)

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