03/04/30
■ 再び, TCBS寒天培地に発育したチトクローム陽性菌 (ビブリオ) について
 先日, ビブリオ・コレラのことで質問しました者です。御回答ありがとうございました。貴重なご意見ありがとうございます。質問の説明不足で申し訳ありませんでした。回答にありました同定方法ですが, デイド・ベーリングのウォークアウェイを使用しています。好塩基性ビブリオが疑われる場合はNaCl塩を加えて同定するように指導を受けていますので, 0.85%の滅菌食塩水にて菌液を調整して同定しました。最初の段階では食塩水を加えずに同定しましたが, 再同定の時は上記のような方法で同定しました。その時の生化学性状を以下に示します。Glu (+), Suc (+), Sor (−), Raf, Rha, Ara, Ino, Ado, Mel, Ure, H2S各々(−), Ind (+), Lys (−), Arg (−), Orn (+), Tda (−), Esc (−), VP (+), Cit (+), Mal (−) , ONPG (−), C14 (+) ,Cf8 (−), Oxi (+)となりました。Cit (+)とOrn (+)は非特異的反応と表示されていましたが, この反応はどうなのでしょうか??? 同定可能性は94.9%という結果でした。TCBS寒天培地での菌集落ですが, 一応写真にとってありますので, 一緒に送りますので見て頂きたいと思います。検査センターのほうにも送り, 同定してもらっています。胆汁からV. cholerae non O1は分離されることはあるのでしょうか??? この患者様は1日前に甘エビを食べて腹痛をおこし, 入院してきました。下痢はおこしておりませんでしたが, 胆管が少し腫れていいるようだったと主治医が言っていました。宜しくお願いします。 
 

【回答】 
 病原性Vibrio group (V. cholerae, V. mimicus, V. parahaemolyticus, V. vulnificusなど) と他のVibrio group を識別する重要な性状はLysine, Ornithine, Arginine (Moellerの方法) の性状です。しかし, 現在の自動機器および同定キットの生化学性状項目には, 従来法で使用しない性状で同定する項目もあります。表現型で同定する場合には従来法の性状が最も重要となります。たとえば自動機器や同定キットと, 従来法での同一項目性状が一致しない場合がありますが, これは使用している基質や反応方法が異なるためです。今回のW/Aの性状 (Lys陰性) を“陽性”に変更すると同定確率が高くなるはずです。V. choleraeは従来法での性状は (Cit, Lysine, Ornithine陽性, Arginine陰性)です。今回W/A での性状でLysine陽性とCit 陽性が非特異的性状と表示された理由は不明ですので, メーカーの方に問い合わせてみてください。一般的に同定機器やキットは通常の菌種は正確に同定可能ですが, 新菌種や稀な菌種は正確に同定できない場合があります。同定キットにおける同定菌種決定のためにいずれの菌種がそれぞれの菌種を定義するために使用されたか, データベースに使用された株数や菌種数はどれだけなのか確認する必要があります。また同定キットを用いた同定結果が異常や重要菌種の場合には, 他の方法で再同定が必ず必要となります。同定キットの結果のみで判断せず, 上記および前回の生化学性状を確認して下さい。添付された菌集落の写真を見る限り,“V.choleraeを疑うコロニー”と判断します。しかし前回の回答でもお答えしたように, コロニーの大きさは培地, 培養環境, 培養時間, 菌株などで異なります。参考までに当検査室で保存しているV. cholerae コロニーを添付しておきますので参考にして下さい。
 

 

O1 V.cholerae (TCBS寒天培地/18 時間培養)
 
 また, 胆管炎からのnon-1 V. cholerae の検出についてですが, 甘エビの食後, 直ちに胆管炎が発症したとするのは考え難いと思います。軽度の下痢症状や肝臓機能低下があり, その後胆管炎を発症したのではないでしょうか。 
(琉球大学・仲宗根 勇)
【質問者からのお礼】 
 ご回答ありがとうございました。大変勉強になりました。これからは, 自動機器だけに頼らず他の方法でも確認するようにしたいと思います。 

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